2019 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ農民の生計における小規模な現金獲得活動と「在来の技術革新史」への視角
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18H00776
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 祐子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (30196779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 公美子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (60333134)
鶴田 格 近畿大学, 農学部, 教授 (60340767)
坂井 真紀子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70624112)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アフリカ農村 / 在来の技術革新史 / 現金獲得活動 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年度目となる2019年度は、初年度の成果をふまえつつ、基盤フィールドであるタンザニア、ドドマ州農村および、比較対象としての日本農村における現地調査を行い、相互検討を継続してきた。内容は、およそ次の3点を中心にまとめることができる ①対象農村の現在における食生活と食料獲得:食生活の内容では家畜や現金の保有の多寡による分化がめだつ。村人による経済状況の評価で富者層とされた世帯が親族や知人に援助する例も少なくない。日常的な食料のやりとりや物々交換は富者層以外の層で頻繁にある。富者層以外の層ではとくに副食における野生植物が重要な位置を占める。野生植物利用と主食における雑穀の位置づけの変化も明らかになった。②土地利用と作物・農法の実践:牛耕や野菜栽培の進展の具体像の把握が進んだ。大規模な植林事業終了以後の育苗・植林技術の浸透についても具体像の理解が進んでいる。土地については、市街地との距離が近い集落での土地不足が目立ち、遠方の集落に土地を求める動きが活発であることも明らかになった。③現金獲得活動のバリエーションは幅広く、新しい活動が次々生みだされている。近年普及してきたマイクロファイナンスや頼母子講の利用が新しい現金獲得活動の開始に結びつくのかが注目される。 生業システムの画期となった年代は、ドドマ市街地との距離によってかなりの年代差がある。開発計画による鉄道や道路建設、植林事業の拠点の設置が新しい生業様式を持ちこむ契機として重要な役割を果たしており、それらの拠点との距離も大きく影響している。深刻な食料不足による他地域への移動によっても、新規な技術や組織化の手法が生みだされているようだ。日本の農村調査では、行商や定期市の歴史的変遷・現状についての現地調査を実施した。これらの成果は、国内外の学会で口頭およびポスターによって発表したほか、論文・著書として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の現地調査と成果発表は、ともに順調に進んだ。国内調査の一部課題は繰り越されたものの、当初予定していた項目についての調査は達成でき、所定の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の現地調査および成果発表は計画通りほぼ進められたが、繰り越し分の国内の調査実施については、2020年からの COVID-19の影響を大きく受けた。今後は、現地調査のほかにも間接的な手法を含めた調査の実施可能性をひろげる。現地調査では、生業システムの変化の画期となった時期を中心に、変化のプロセスを食生活、カネまわり、土地資源等の観点から跡づけること、日本国内の調査との比較を含め,農民の生計にとっての現金獲得活動の位置づけとそれが社会的再編の方向性にもたらす影響を検討する。また、これまでの研究実績をもとに、本研究課題としての成果を書籍等の形でまとめるための準備を進める。
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