2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00793
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
楜澤 能生 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40139499)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 由美子 福島大学, 行政政策学類, 教授 (80302313)
高村 学人 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80302785)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 農林地取引法 / 農地市場の支配 / シェアディールによる間接的土地取得 / 連邦制改革による立法権限の再編 / 土地市場政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
農地管理法制の比較研究の対象としてドイツをとりあげた。従来ドイツの農地政策は、地域に根差した農民経営の存立を確保することに主眼を置いてきた。それを実現するための手段として農林地取引法があり、同法は農林地取引を行政の許可の下に置くことによって、政府が目指す農業構造の改善に矛盾する取引を排除してきた。しかし特に東部ドイツを中心として、大規模な法人経営が数を増し、さらには農外コンツェルンによる農地市場の支配や、農地の直接取得ではない、企業の持分取得による土地の間接取得を通じて農林地取規制を回避するといった状況が出現し、農林地取引法の実効性、正当性が揺らぐ事態となっている。 巨大コンツェルンによる土地取得を通じた農業構造の大変動が、持続可能な農業、農村社会の存立を脅かす懸念が生じている。 2006年の連邦制改革により農林地取引法の立法権限が各州の管轄となったことで、各州が独自の農林地取引法を立法することが想定されたが、現在なお一州だけが独自の法を持つに過ぎない。連邦農林地取引法による規制は、憲法による所有権保障の下での土地市場における取引の自由との関係で、いかに評価されるかという憲法上の複雑な問題を抱えつつ実務が展開されてきた。これにEU法による取引の自由、域内外国人に対する差別の禁止等の論点が付け加わる。このように連邦レベルで積み重ねられてきた複雑で繊細な論点を含む問題領域での立法は容易でないことに加え、農林地取引法の機能不全をどう改善するかという新たな挑戦が突き付けられてもいる。こうした事態に各州は独自の立法に躊躇を示しているという現状がある。しかしその中にあって、シェアディールのような手法で土地を集積する活動をいかに規制するかの問題に立ち向かおうとする州もある。 ドイツの農林地取引法制が以上のような問題を抱えていることを明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ連邦食料農業省のChristian Busse氏との共同研究の一環として、同氏を招聘し、ドイツ農林地取引法の歴史と現状についての講演会を実施した。その準備として同氏に「ドイツにおける農林地取引法制―史的概観と今日の議論状況―」と題する論文執筆を依頼し、これを研究代表者が翻訳して「早稲田法学」に掲載した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.農地管理法制の比較研究の一環としてドイツ各州における農林地取引法の立法動向を調査研究する。合わせて各種農業団体のこの課題に関する見解を調査研究する。 2.農地管理法制の比較研究の一環として中国における三権分置政策の展開を引き続きファローする。その際に土地所有権主体としての集団に着目し、集団にかかる政策展開を整理し、集団が実際にどのような変容をしつつあるか実態調査を通じて明らかにする 3.日本については、農地中間管理機構法の見直しの年に当たり、政策当局の評価を検討しつつ、法の機能に関する実態調査を継続する。その際地域における農地の自主管理の在り方をいかに変容させたかという視点を重視する。
|
Research Products
(1 results)