2018 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary Research of the Legal Reactions for the Crisis in the EU
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18H00798
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 典之 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70203247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 和広 東邦大学, 理学部, 講師 (00781858)
門田 孝 広島大学, 法務研究科, 教授 (20220113)
春名 麻季 四天王寺大学, 経営学部, 准教授 (20582505)
HANADA EVA 神戸大学, 国際連携推進機構, 准教授 (40581856)
植木 淳 名城大学, 法学部, 教授 (50364146)
志谷 匡史 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60206092)
関根 由紀 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60379493)
吉井 昌彦 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80191542)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EU法 / 国際人権 / EU経済論 / 比較憲法 / 商法 |
Outline of Annual Research Achievements |
EUの危機への対応につき、初年度の2018年度は、その法的対応に関する多元的・複合的考察を行うためのスタート・アップとして、研究代表者・井上は、日本との比較検討を行う上での基礎的考察を立憲主義の展開という観点から行い、その成果をEUからの脱退はしないがEUに反抗的な構成国の1つであるポーランドで公表すると共に、より具体的な内容としての親EU構成国のドイツ連邦共和国の連邦憲法裁判所やヨーロッパ人権裁判所の判例を通じたヨーロッパ人権・基本権の問題についての研究成果を公表した。 公法領域からの研究を担当する研究分担者・門田および春名も、研究代表者と同様に、具体的問題としての民主制や人権・基本権の問題についてのヨーロッパでの判例研究に関する成果を公表した。また、研究分担者・高橋も情報法関連の研究成果を公表している。なお、私法・経済学領域を担当する研究分担者は必ずしもまだ成果発表が行われていないが、私法領域担当の研究分担者はヨーロッパ、特にBrexitの当事国である連合王国の会社法の在り方や社会保障制度の今後に関する研究は進めており、2019年度以降にそれらの成果は公表されることになる。また、経済学領域担当の分担者は、BrexitのEU域内およびEPAならびにSPAを締結した日本への影響についての研究、および金融関連の銀行同盟の行方についての研究は進めており、その成果については公表されるのを待つ状態にある。 なお、これらの統括的・総論的領域、個別領域での研究を進めるために、9月に神戸大学で研究会を開き、研究代表者・井上より、上記基礎的研究内容の紹介と同時に、本研究の今後の進め方、統一的な研究成果としてのまとめ方について話し合う場を設け、研究分担者との間での本研究に関する基本的コンセンサスの形成に努めた。その結果、上記のような一定の研究成果を得らたということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年9月に開催した神戸大学での研究会において、研究代表者・井上から今後の研究の進め方についての紹介・提案を行った結果、公法分野での研究分担者・門田、春名、高橋の3名の出発点としての研究成果は公表されている。また、経済学領域の研究分担者・吉井、花田の両名も、一定の研究活動を行った結果、現在は、その成果の公表を待つ状態にあるといえる。ただ、私法領域の研究分担者は、日本の問題を考える際の研究成果を挙げている者もいるが(研究分担者・志谷)、研究分担者・関根および植木は、労働法制や社会保障法制のまだ十分な研究成果を挙げられておらず、現在、本研究をスタートするための準備段階にとどまっている。 さらに、本来ならば秋に続けて年度の終わりに2018年度の研究成果報告のための研究会を開催し、研究代表者、研究分担者の間での成果確認を行う予定であったが、実際には、本研究に携わる代表者・分担者の時間的都合から、当該研究会を開催できない状態になってしまった。そのために、メール連絡の方法でしか、お互いの研究内容の進捗状況を確認することができず、その点で初年度の研究活動としての成果としては若干の不十分さが残る。そのために、研究代表者・井上が、本研究に関する研究分担者の研究活動について十分把握しきれていない状態にあり、その点でも若干の研究活動に関する総括・統括ができていないことは否定できない。 但し、上記の通り、研究代表者・井上をはじめ本研究の公法分野の研究分担者及び経済学分野の研究分担者は予定通りの研究活動を進めており、私法分野の遅れは、Brexit等のEUの揺らぎの原因に不確実性が多分にあるという点を勘案して、今後十分にカバーできる状態にあると考えることができることから、本研究はおおむね順調に進展していると考える次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の一定の成果を受けて、今後は研究代表者・井上による基礎的・総論的研究をさらに進めるとともに、その成果に基づき公法領域、私法領域、経済学領域での研究活動の対象をより具体的に示すことが重要になってくる。特に、公法領域ではEUの基本価値である立憲主義的諸原理の具体的内容の考察と共に、その個別領域になる人権・基本権、権利保護の制度的裏付けの本質といった諸問題を2019年度以降は検討していくことになる。また、私法領域では公法領域の検討に併せて市民社会の在り方から経済統合を進めていくうえでの具体的な人、物、金、サービスの自由な移動をどのように確保するのかという観点からの法制度の仕組みの検討を行うことが必要になる。さらに、それらの法制度の仕組みを準備するための前提になる経済学領域の検討として、現実のEUの、あるいは加盟各国の経済状況とEUそれ自体の経済政策の在り方に関する研究を進めていくことが、本研究のメタの領域として求められることになる。 以上の研究内容の進展のために、2019年度以降は、活発に研究会を開催すると同時に、関連する問題の解明のためにワークショップを開催することで欧州の研究者の協力を得て、意見聴取も積極的に行っていく。同時に、そのためには、本研究活動における成果を外部からも見えるようにする必要があるので、研究成果をより積極的に公表すると共に、ネットを使って広く情報発信を行うことに努める。特に本研究の現状を可視化し、その成果を社会還元できるように、2019年度は本研究のホームページを立ち上げ、随時、研究成果を社会に発信することで、研究活動の遅滞が起こらないように留意する。 なお、EUの問題は非常に複雑な要因が絡み合っていることから、本研究グループでEU域内に出張することにより、その生の情報を得ると同時に、そこでの問題を肌で感じられるような活動も行っていく。
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Research Products
(14 results)