2019 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary Research of the Legal Reactions for the Crisis in the EU
Project/Area Number |
18H00798
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 典之 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70203247)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 和広 東邦大学, 理学部, 講師 (00781858)
門田 孝 広島大学, 人間社会科学研究科(法), 教授 (20220113)
春名 麻季 四天王寺大学, 経営学部, 教授 (20582505)
HANADA EVA 神戸大学, 国際連携推進機構, 准教授 (40581856)
植木 淳 名城大学, 法学部, 教授 (50364146)
志谷 匡史 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60206092)
関根 由紀 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60379493)
吉井 昌彦 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (80191542)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | EU法 / ヨーロッパ人権法 / 比較憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度分の研究実績としては、EUにおける揺らぎの法的事象について、日本での文献研究を踏まえて、2019年10月30日および11月1日にKobe University Brussels European Centre (KUBEC)において、"The Rule of Law, Democracy and Constitutionalism: Dialogue between Japan and Europe"と題するワークショップを開催し、本研究代表者・井上をはじめ研究分担者・吉井、同・関根、同・門田、同・植木、同・春名、同・高橋の日本からの計7名と、ポーランド・ニコラス・コペルニクス大学法学部のWitkowskieu教授およびSerowaniec教授の2名、ドイツ・ハンブルク大学法学部のKoztur教授の1名、オーストリア・ザルツブルク大学法学部のSchmalenbach教授の1名、イタリア・ローマ・ルイス大学法学部からFasone教授の1名の計5名のヨーロッパ法研究者が参加して日本からみたEUの問題点、ヨーロッパ、特に中東欧からみた問題点についてのそれぞれの報告を行い、日欧間での有意義な意見交換を行った。なお、その研究成果の一部については、Kobe University Law Reviewの52号(2020年3月)において英語で公表している。そこでは、EUでの問題であったイスラムからの移民受入れ、ポーランドでのEUへの抵抗、個人情報保護の強化、BrexitのEUにもたらす影響などをテーマとしてそれぞれ取り上げ、EUおよび日本における共通の基本価値である立憲主義、法の支配の可能性を検討した。その際に、EUおよび日本の両方で立憲主義の揺らぎが、それぞれの社会状況の下で発生していることが確認できた。特にEU側では、2019年2月1日のEPA/SPAの重要性が認識できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日欧間の研究者によるEUの揺らぎに関する法的事象からの研究報告がワークショップで行われて、具体的に何が問題になり、揺らぎの原因がどこにあるのか、具体的にはEUそのものにおける民主主義の赤字が東欧諸国の民主的プロセスを通じて惹起されている点、Brexitも英国の議会主権・コモン・ロー体制からの主権侵害の疑念から惹起されたこと、EUの移民受け入れ政策や厳しい個人情報保護のようなシステムがEUの欧州委員会というエリート官僚組織によって作成・運営されていることに対する加盟国の反発があることなどが確認できた。そして、その内容は、ワークショップの成果を公表したKobe University Law Reviewの52巻に日欧の研究者による報告内容として示すことができた。また同時に、当該ワークショップにおいてドイツの研究者から提起されたEUの基本価値(欧州連合条約2条記載のEUの価値)に対する義務違反に対抗するEU側の措置(欧州連合条約7条の制裁措置および欧州連合運営条約258条の義務違反手続)の示唆をうけて、今後、EUの揺らぎに対してどの様な手続上の措置が可能で、どこまで実効性を確保できることになるのかの法的対応の考察を進めるという今後の本研究の方向性を得ることもできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度のワークショップで得られた知見を基に、EUの揺らぎに対する法の支配や立憲主義からの対応可能性を研究する。個別的な領域で、ポーランドにおけるLGBTといった性的少数者に対する差別的措置(LGBTフリーゾーン)の問題、イスラム諸国からの移民の受け入れの結果としてのEU市民との同化政策の内容、現実味を帯びてきたBrexitのEU経済に与える影響とその緩和措置としてのEU側の対応を、いかなる手続でどこまで実施していくのかの実証的研究と、その内容確認の正確性を欧州の研究者と協働しながら検討していく。但し、2019年度後半に発生したCOVID-19の影響で、どこまで欧州との対話のための人的交流が可能であるのかは未知数になっている。
|
Research Products
(8 results)