2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00802
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
今井 猛嘉 法政大学, 法務研究科, 教授 (50203295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
膳場 百合子 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00548886)
木林 和彦 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20244113)
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
遠山 純弘 法政大学, 法務研究科, 教授 (70305895)
松村 良之 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (80091502)
長谷川 晃 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90164813)
城下 裕二 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90226332)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自由意思 / AI / 法人 / 損害賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、刑事責任を民事責任と比較しつつ、自然人以外の存在に係る刑事責任の想定可能性を検証するための基本的枠組み設定を試みた。具体的には、第一に、刑事責任を基礎付けるものとされてきた法哲学的発想(自由意思を有する自然人をモデルとする理論)の妥当範囲を、近時の法哲学の議論に即して検討した。自由意思を有する自然人という発想は、ドイツ語圏の法哲学では、未だに強固な基礎を形成しているが、他の法圏では、自由意思というモデルの限界が意識されつつあることが確認された。後者によれば、法人やAIの刑事責任の構想も可能となろう。第二に、刑事責任と民事責任との本質的差異を、特に、財産的制裁の趣旨、目的の相違に着目し、損害賠償の法理を踏まえて検討した。金銭的負担を犯罪者又は不法行為者に課する点では共通するのに、刑事罰としての罰金が固有の属性を有するとされるのは、刑罰に期待される社会的イメージに由来するのではないかとの仮説が検証された。この検討は、翌年度以降も続けられるべき主要なテーマである。第三に、刑事責任論が前提とする自由な意思決定可能な自然人というモデルが、自然科学的に維持しうるかにつき、医学、心理学の知見を踏まえて検討した。医学的には、脳の機能の分析が進んでおり、全能な自由意思を有する自然人という前提は、崩れつつあることが確認された。第四に、法人及びAIに刑事制裁を科す場合に想定可能なモデル設定を、法と経済学の観点から開始した。どのような場面での法人とAIの挙動を想定するのかで、モデル作成も異なることが確認され、その具体化は、翌年度以降の課題とされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、今後の研究の基礎付けを目指し、概ね、予定通りの研究を行えた。本研究は、自然人を対象としてきた刑事制裁を、法人、さらにはAI との関係で観念できるかを、隣接諸科学の知見を用いて検討しようとするものである。そこでは、法哲学、民事法、心理学、医学、法と経済学の知見を、主として活用するが、それぞれの分野で責任という概念についての把握は異なっている。そこで2018年度は、それぞれの分野での現在の主張を概観しつつ、刑事責任の意義の相対化及び客観化を試みた。この検証作業は、今後も本研究の中心課題となるが、その端緒となるべき基礎的研究ができたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度の研究を踏まえ、刑事責任の特徴を相対的かつ客観的に把握する調査、検討を加速させる。具体的には、刑事責任、民事責任、その他の法的責任に関する、一般人の素朴な法感情の調査、分析を開始する。それと併行して、各種の法的責任の趣旨及びそこから導かれる効果の特徴を確認し、想定される主体毎に刑事責任の発現態様が異なりうるかについて、検討を開始する。自動運転車に係る事故の責任帰属の問題は、AIと法人の刑事責任、いずれにも現実的で重大な課題を提起することから、この問題の検証も開始する。
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Research Products
(3 results)