2019 Fiscal Year Annual Research Report
民主制下における復旧・復興-そこで生じる政治的課題の整理・検討
Project/Area Number |
18H00812
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河村 和徳 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (60306868)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 智哉 金沢大学, 法学系, 講師 (20806153)
安藤 尚一 近畿大学, 建築学部, 教授 (90716292)
岡田 陽介 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (90748170)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 被災地選挙 / 原子力災害 / 風評被害 / 震災記憶の風化 / 復興五輪 / 創造的復興 / 福島再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、福島県の自治体職員や復興に携わる関係者に対するフィールドワークを実施する一方、福島県民を対象とする県民意識調査を実施した。 福島県の自治体職員や復興に携わる関係者に対するフィールドワークは、6月から9月を中心に福島市(福島県庁)、南相馬市、川俣町などで実施した。復興に係る行政の抱えている課題や風評被害克服のための取り組みなどを調査したこのフィールドワークは、韓国の研究者(ソウル市立大学・高麗大学など)などが相乗りで参加した。福島の現状を把握するとともに、風評被害が著しい韓国での情報発信を期待しての共同調査となった。ヒアリングをした地方政治家や自治体職員からは、復興期間終了後の展望が政府から示されないことに不安を感じていることや、なかなか進展しない福島の原発の廃炉や処理水対応についての懸念が指摘された。一方、農業関係者などからは一部の国での輸出規制はあるものの徐々に解消に向かっていることへの安堵の声があったが、復興政策と経済再生がうまくかみ合っていないという指摘もあった。 年度末には、福島県民1,000人を対象とした県民意識調査を実施した。この調査は、科研費基盤B(15H02790)で行った意識調査との対比を可能とするため、ほぼ同じ規模・同じ手法(サンプリング、郵送法)で行った。回収率は44.0%であった。この調査から、福島県民の中には、福島再生に対する東京電力の積極的な関与を期待している者が少なくないことや、自主避難者に対して厳しい姿勢を採る者が少なからずいることが数値的に明らかになった。また福島県の創造的復興策として位置付けられているイノベーションコースト構想に対して「わからない」する者の比率は前回調査よりも減っているが、以前、多いことが明らかになった。創造的復興策が県民生活にどう結びついているか、行政は丁寧な説明が必要であり、これを福島県に対し提言した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、2018年度において研究分担者の不幸があり、分担者の追加を余儀なくされたが、新たに加わった分担者の協力もあり、当初予定されたフィールドワークが実施できている。また令和元年東日本台風が調査対象である福島県に被害を出したことから、実施予定であった県民意識調査の質問内容を急遽追加するなどといった対応に追われたものの、無事年度内に予定されていた調査を実施することができた。もし調査が年度内に終了していなかったら、新型コロナウイルスの蔓延で調査が難しくなっていたと思われる。 本研究課題の研究成果は順調に公開されており、研究に係る書籍を既に一冊出版することができた。2020年度も、成果の出版を出版社が承諾していることも順調に研究が進められていると判断する要素である。 ただし、(1)復興五輪の側面を持つオリンピック・パラリンピック東京大会2020が延期となった影響で復興期間終了後にオリンピック開催という状況が生じた、(2)新型コロナウイルスの影響で調査実施の目算が狂った、という2つの大きな状況変化がある。そのため、2020年度がこれまで通りに研究を進捗させられるかはやや不透明である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、研究計画上、最終年度であると同時に、東日本大震災復興期間の最終年度でもあるため、報告書を作成・出版することと同時並行して、フォローアップ調査を実施する予定である。 本課題に係る成果発信としては、2019年度の時点で学会での報告や一般向けの書籍の出版を既に行っており、2019年度実施の県民意識調査もメディア報道(『福島民報』2020年4月6日記事ほか)され福島県民への研究成果還元もなされている。2020年度は、一般向けの研究成果還元も意図しつつ、学協会での成果発表に力を入れる予定である。福島県民意識調査を2020年度末に出版する計画も立てており、現時点で出版社からの了承も得ている。 2020年度のフォローアップ調査は、福島県におけるフィールドワークと、意識調査を行う予定である。意識調査は、福島県民との意識対比を試みる関係から、全国意識調査並びに韓国でのネット調査を行うことを予定している。全国調査では、東日本大震災に対する意識の風化や、福島に対する風評を測定することを中心に調査する。韓国でのネット調査は、福島に対する風評や原発で発生する処理水に対する意識について明らかにしたいと考えている。また韓国での調査は、2019年度の福島県内でのフィールド調査の国際共同研究の枠組みで実施したいと考えている。 新型コロナウイルスの蔓延によって、意識調査の日程を立てにくい環境が生まれており、また対象者へのヒアリングはオンラインで行う必要性に迫られている。また東日本大震災の被災自治体は復興とコロナ対策の同時対応をしなければならないため、本研究課題へどこまで協力してもらえるかわからない。これらの研究遂行上の不確実要素が2020年度の懸念材料である。
|
Research Products
(14 results)