2020 Fiscal Year Annual Research Report
環境再生デザインの公共社会学:修復的環境正義の実践的理論構築に関する研究
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18H00920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福永 真弓 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70509207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 康司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20316334)
富田 涼都 静岡大学, 農学部, 准教授 (20568274)
鬼頭 秀一 星槎大学, 共生科学部, 教授 (40169892)
宮内 泰介 北海道大学, 文学研究院, 教授 (50222328)
友澤 悠季 (西悠季) 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (50723681)
大倉 季久 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (90554147)
目黒 紀夫 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (90735656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災害・公害・産業跡地の再生 / 跡地空間の再デザイン / フードテック産業 / ヴァナキュラーなフードシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍のため、社会実験としてのワークショップなどの開催が限られた。また、参与観察・非構造化インタビューを実施することの困難もあったため、研究手法として以下の2点に大きく的を絞った。(1)戦後の沿岸の資源利用史、公害・災害・産業跡地の再開発と空間利用の変遷史、農林水産業の技術史を歴史資料およびキーインフォーマントインタビューにより明らかにした。(2)産業跡地再生と新たな科学技術・産業形成について、とりわけエネルギー産業および食糧生産に関わる産業にしぼって、どのような新たな動きがあるのかを整理し、関係企業・業界紙への聞き取りを行った。 その結果、2つの興味深い事象の存在が明らかになった。1つは、災害復興、気候危機への適応という異なる文脈を背景に、跡地空間の再デザインがとりわけ食糧生産事業において急速に進んでいること。そして、災害復興と気候危機への適応は、共通のリスクに立ち向かい、跡地空間の「開発」を支える論理として相互に関連付けられ、親密に支え合っているということだ。もう1つは、これら親密な2つの論理は、グローバルなフードシステムを牽引してきたプレイヤーだった巨大フード産業や総合商社のみならず、流通、不動産、倉庫、ゼネコンなどの異業種によるフードシステムへの参入を促し、跡地空間利用およびそのデザインにおける重要なプレイヤーとなりつつある、ということだ。 こうしたプレイヤーたちは、科学技術の移転と翻訳を活発に促しながら、育種から育成のための資源・空間設計までがパッケージ化された「商品」として形成し、跡地空間を占有している。こうした資本空間の形成は、対峙しうるヴァナキュラーなローカルなフードシステムの再評価を招くが、同時に、そのローカル性をも商品化されるという傾向も明らかになった。環境正義や気候正義が陥っている隘路の存在が浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響もあり、新しい研究手法を模索する必要があった。そのため、従来の計画どおりには成果報告や論文執筆が進まなかった。しかしながら、新しい研究手法によってえられた成果を別途まとめることも可能になり、当初の予想よりも、跡地再生について何が今起ころうとしているのかを立体的に捉えることができた。けがの功名とでもいうべきか、結果として、研究計画の進展は順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の状況はまだおさまりをみせないため、ラポールのある地域においても、とりわけ高齢者や病院・介護産業の関係者が家族に多い地域社会では、調査の困難さは継続することが予想される。 ただし、とりわけ東日本大震災および原子力災害に関する跡地再生については、どのような意思決定過程で行われてきたかについては、ある程度行政文書やキーインフォーマントインタビューにより明らかに出来る側面もある。こうした観点からの分析を加え、また、今回明らかになった、気候危機および災害復興という2つの論理の親密な関係性と、それによる新たな資本空間生成について、とりわけ海外での事例・理論研究を踏まえつつ、研究を進めていくことが目指される。
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Research Products
(9 results)