2019 Fiscal Year Annual Research Report
鶴見和子の内発的発展論を「受苦と共生の社会運動論」として現代に再考する実践的研究
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18H00939
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
杉本 星子 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (70298743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 聡 京都文教大学, 臨床心理学部, 教授 (20269749)
佐藤 量 立命館大学, 先端総合学術研究科, 非常勤講師 (20587753)
加藤 千香子 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (40202014)
高石 浩一 京都文教大学, 臨床心理学部, 教授 (40226733)
小林 康正 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (40288684)
吉村 夕里 京都文教大学, 地域協働研究教育センター, 研究員 (50388211)
鵜飼 正樹 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (70192507)
鶴見 太郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80288696)
黒宮 一太 京都文教大学, 総合社会学部, 准教授 (80449561)
猿山 隆子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (90774555)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内発的発展論 / 社会思想史 / 共生 / 鶴見和子 / 水俣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績では以下の3項目が特筆される。 ① 京都文教大学鶴見和子文庫所蔵資料のデータベース化の進展:鶴見和子のフィールドノートや資料の劣化による破損が懸念されるガリ版刷りの共同研究会記録および水俣病公害闘争に関する資料のデータベース化をさらに進めた。また個人の蔵書や資料を所蔵している各地の資料館のデータベースの公開規約や閲覧申込書を参照して、来年度予定しているデータベースの一部公開に向けて、閲覧システムを具体的に検討した。 ② 水俣現地調査の実施:共同研究会のメンバーがそれぞれの研究テーマに基づいて水俣で現地調査を進めるとともに、2019年8月31日―9月1日に合同で水俣病問題関連地域を視察した後、合宿形式で共同研究会を実施した。共同研究会のメンバーが鶴見和子の内発的発展論の原点に立つ経験を共有できたことは、学際的研究を一つの方向性の下にまとめてゆく上で大きな意義があったと考える。 ③ 本研究の社会還元を目的として、2020年2月6日キャンパスプラザ京都において公開研究会「水俣のポリティクスとポエティクス―鶴見和子/内発的発展論の原点に立つ」を実施:ユージン・スミス氏とともに写真を通して水俣病問題の悲惨さを世界に伝えたアイリーン・美緒子・スミスさんの基調講演に続いて、共同研究メンバーの黒宮一太が「社会問題と学術研究はどう交わるべきか」をテーマに報告した。その後、フロアを交えて熱心な討議が行われ、本研究の社会的意義を再確認することができた。 その他、鶴見の内発的発展論を社会運動論として捉えた実践的研究として、昨年度に引き続き、京都市南部向島ニュータウンにおける中国帰国者や外国人市民、障がい者の実態調査と彼らの地域参画の支援をした。また、新型コロナウィルスの流行により3月に予定していた共同研究会は実施できなかったが、研究成果の出版に向けた打ち合わせも進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 鶴見和子文庫のデータベース化や文庫の公開に向けたシステムと規約作りは、予定通り進んでいる。資料の劣化による破損が懸念されるガリ版刷りの共同研究会記録や水俣病公害闘争に関する資料のデータベース化はほぼ終わり、同様に破損が懸念される生活綴り方関連の資料のデータベース化もほぼ終わった。来年度のデータベース公開に向け、学内の手続き等を進める段階である。 ② 2019年度は、共同研究会での研究会メンバーの情報交換と、水俣での共同調査、水俣病問題に焦点を当てた公開研究会を実施し、共同研究はほぼ計画どおりに進んだ。ただし、新型コロナウィルスの流行によって、2月末以降の共同研究は停滞を余儀なくされている。 ③ 新型コロナウィルスの流行により、研究成果の社会還元のための公開研究会は規模を縮小して実施したが、内容は充実していた。 ④ 鶴見和子の内発的発展論を社会運動論として捉え再考する実践的な取り組みとしての、京都市南部向島ニュータウンにおけるまちづくり事業への共同研究メンバーの参画は継続的に実施され、地域の多文化多世代共生に寄与できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、以下の3項目を軸に共同研究を推進する。 ① データベース構築作業の継続とデータベース資料の一部公開:今年度に引き続き鶴見和子文庫の収蔵資料のデータベース化を進めるとともに、来年度は、鶴見が長年関わってきた生活綴り方運動や水俣病公害問題に関する所蔵資料のデータベースを一部公開する予定である。 ② 本科研研究の成果に基づいて、シンポジウム「鶴見和子の『受苦と共生』の内発的発展論から、新型コロナウィルス禍後のグローバル社会を考える」(仮題)を実施する予定:新型コロナウィルスの流行は、近代化のもとで破壊された自然と人間の関係、グローバル化と国家統合の軋み、経済至上主義の下での社会的格差と貧困層の拡大という現代社会の諸問題を顕在化させた。これらはいずれも鶴見和子がすでに近代化批判のなかで指摘してきたことであった。本シンポジウムでは、水俣病という公害問題を原点として、「受苦の共感」と地域を基盤とした「創造的な共生(ともいき)社会」の構築を論じる鶴見の内発的発展論を、新型コロナウィルス禍後の社会の再構築の方向性を提示する社会運動論として学際的に論ずることにより、研究成果の社会還元を目指す。 ③ 共同研究の成果出版に向けた補足調査と共同研究会の実施:共同研究メンバーはそれぞれ必要な補足調査を実施する。また、共同研究会を開催してメンバーの研究報告と情報交換をするとともに、編集コアメンバーが集まり成果出版に向けた編集作業を進める。
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Research Products
(4 results)
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[Book] 柳田国男2019
Author(s)
鶴見太郎
Total Pages
358
Publisher
ミネルヴァ書房
ISBN
9784623087396