2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00940
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
吉村 治正 奈良大学, 社会学部, 教授 (60326626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正司 哲朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (20423048)
渋谷 泰秀 青森大学, 社会学部, 教授 (40226189)
渡部 諭 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 教授 (40240486)
小久保 温 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (50295953)
佐々木 てる 青森公立大学, 経営経済学部, 教授 (70396597)
増田 真也 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 教授 (80291285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会調査 / ウェブ調査 / 世論調査 / 測定誤差 / 非標本誤差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、内閣府世論調査の測定誤差を明らかにすることで、より正確に社会情勢および社会意識を描写できるような社会調査方法を提案する。内閣府世論調査は社会学のみならず社会科学全般に強い影響を与えているが、その結果には現実の社会をどこまで反映できているか疑問を抱くようなものが少なくない。本課題では、こうした調査結果と生活実感との乖離が非標本誤差の大きさによると考え、これまで社会学で比較的看過されがちだった測定誤差を心理統計学の発想を導入することで抑制し、より正確な社会調査を提案していくことを目標とする。 課題初年度の2018年度は、現行の内閣府世論調査の技術的問題点の洗い出しを行い、複数回答(MA)の多用と高い認知的能力を必要とする難しい質問項目が多いことが指摘された。2019年度は、「日本人」という用語の規範的同調圧力と高齢者からの回答の増加という二つの問題について、主に前年度に行われた実験的ウェブ調査のデータ分析が進められた。内閣府世論調査では頻繁に「日本人」という用語を使用しているが、この用語のもつ強い規範的同調圧力が特に多重国籍者からの回答に深刻な影響を及ぼしている可能性が指摘された。また、近年の内閣府世論調査は、高齢者からの回答の割合の増加が日本人口の高齢化以上のペースで進んでいる。本課題に参加した心理学者・社会心理学者は、一般的に高齢者は合理的というよりもヒューリスティックな意思決定を行いがちであると指摘し、それが中間回答の増加や項目非回答の発生などにどのような影響を及ぼしているかを分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題初年度の2018年度は現行の内閣府世論調査の抱える技術的問題点の洗い出しと、その影響をウェブを用いた実験的社会調査によって測定した。2019年度は、この実験的調査のデータ分析を進め、その知見を日本社会学会や日本心理学会などで研究報告を行った。 計画では、これらの知見を踏まえた社会調査を2019年度中に関西地域で実施し、内閣府世論調査の結果と対比する予定であった。だが、当初は2020年1月に実施を見込んでいたこの地域調査について、協力を依頼した自治体との作業日程の調整の結果、2020年4月以降に実施を持ち越すこととなった。とはいえ、調査実施の準備は順調に進んでおり、課題遂行に深刻な影響を及ぼすことなない。また、これ以外については計画通り順調に進んでいることから、2020年度は当初の予定どおりに進捗すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度より持ち越した地域調査の実施とそのデータ分析ならびにその結果を主要学会で公表する予定である。現時点(2020年4月15日)で、コロナウィルスの影響により調査の実施を本年6月以降に再スケジュールせざるを得なくなっている。だが、すでに得られたデータについての分析は着実に進んでおり、本年度秋に実施される関係学会で3回程度の報告と3本ほどの論文(紀要および学会誌)執筆を見込んでいる。
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Research Products
(8 results)