2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00971
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
二井 仁美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50221974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 剛志 静岡大学, 教育学部, 教授 (10340043)
家村 昭矩 名寄市立大学, 保健福祉学部, 特任教授 (10412876)
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60322210)
阿久津 美紀 目白大学, 人間学部, 助教 (50823449)
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教護院 / 児童自立支援施設 / 北海道家庭学校 / 家庭学校 / 児童福祉史 / 教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、教護院50年の歩みを検討するための資料調査を以下のように行った。 Ⅰ.質的分析に付すべき資料として,教護院時代の家庭学校の様態を伝える、家庭学校社名淵分校および北海道家庭学校旧職員や旧職員家族、支援者、卒業生等、関係者に関わる記録や書簡の調査を、北海道家庭学校において実施した。調査を通して、北海道家庭学校所蔵の未整理書簡群の数量を特定すると共に、これらの内、戦後書簡を含む未整理資料群の目録作成作業を実施し、二年間で概要目録を完成するための作業計画を策定した。さらに、北海道家庭学校では、退所者に関する匿名記号化データの入力状況について修正及び追加作業の一部を行った。 Ⅱ.家庭学校社名淵分校関係資料は、北海道家庭学校だけではなく、東京家庭学校にも所蔵されているため当該施設で史料調査を実施した。その結果、同校資料室でかつて中性紙のもんじょ箱に収納した資料群が、隣室や当該資料室前の廊下等を含む急激な環境上の変化のために、フォクシングを始めとする深刻な劣化状況に晒されていることを発見した。分析に必要な資料の収集のためには資料の劣化防止措置を講ずる必要があり、劣化状況把握のための調査を実施し、応急的な劣化防止措置を講じた。将来的な保存計画立案と必要資料の本格的調査は次年度に行うこととした。 Ⅲ.北海道家庭学校長であった留岡清男の講演記録等を北海道大学文書館、教護院関係資料を武蔵野学院図書資料室、矯正図書館等で複写及びデジタルデータ等で渉猟した。 Ⅳ.研究会を開催し、研究分担者および研究協力者等の研究の進捗状況を確認し今後の作業計画について協議すると共に、学会、シンポジウム、雑誌等に発表する研究の中間報告について検討し、それぞれの成果を学会等で発表する準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の点から、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。 Ⅰ.2018年度は、質的分析に付すべき資料として,教護院時代の家庭学校の様態を伝える、家庭学校社名淵分校および北海道家庭学校旧職員や旧職員家族、支援者、卒業生等、関係者に関わる記録や書簡の調査を、北海道家庭学校において実施した。この際、アーカイブズを専門とする研究協力者及び研究分担者の協力により、北海道家庭学校所蔵の未整理書簡群の数量を特定すると共に、戦後書簡を含む未整理資料群の目録作成作業完成までの具体的計画とその目途を明確にすることができた。データベース作成においては追加や確認が必要な作業が残されているものの、分析に必要な情報の収集という点で評価することができる。 Ⅱ.東京家庭学校資料室に保管されている資料群が深刻な劣化状況にあり、劣化防止の措置を講じることなく資料調査を遂行することができないことが明白になった点では、本研究計画の遂行にダメージではあった。しかしながら、科研の初年度における発見であったことに加え、資料の保存措置に詳しい専門家に研究協力を求めることができ、専門的知見を有する協力者による複数回の現状把握調査と、劣化防止のための保存環境の応急的措置を講じ、次年度以降における資料調査の可能性を確保することができた点で評価することができる。 Ⅲ.北海道大学文書館所蔵の北海道家庭学校元校長留岡清男の講演記録等、武蔵野学院図書資料室、矯正図書館等における教護院関係資料等の収集により、本研究の分析に必要な資料群を獲得し得た点で評価することができる。 Ⅳ.本科研の最終的な成果発表を意識しながら、研究代表や研究分担者等が、研究会や学会、出版物等において研究の中間報告を行うことができた点で評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、基本的には本年度の作業を継続する。 Ⅰ.質的分析に付すべき資料として発見され資料論的検討を進めその作業途上となっている、家庭学校とその退所者に関わる書簡などの北海道家庭学校所蔵の未整理資料の目録を完成する。あわせて東京家庭学校資料調査を行う。当該資料群は崩し字で記された文書も多く、また劣化 も進んでいるため、近代文書を扱うことのできるアーカイブズ学や近代日本史を専門とする研究協力者高島真紀氏や田中悠介氏の協力を求める 。 Ⅱ.昨年度も進めてきた1948 年から1997 年にいたる50 年間の北海道家庭学校退所者に関する匿名記号化データについて、入力データに問題がないか確認作業を行い、必要情報の修正入力を行うとともに、奥田カード記載情報の必要部分を追加入力する作業を行う。この作業につい ては、北海道家庭学校指定の作業協力者に依頼する。 Ⅲ.教護院と児童福祉行政との関係について、それぞれの区分された時期の資料を、北海道立文書館や道立図書館、武蔵野学院所蔵資料室、他施設等などで渉猟し、必要な資料はデジタルカメラによる撮影とその影印本化を行う。それらの資料の検討により、それぞれの時期における北海道の教護院をとりまく状況を明らかにする。 Ⅳ.北海道家庭学校が所蔵する書簡、同校職員日誌、周年記念誌、北海道家庭学校関係新聞記事等の検討をとおして、各時期における教職員の一覧と分掌、寮や作業班の担当者を確定したうえで、各寮や作業班の時期における様態を解明する。 Ⅴ.少年非行と精神医学に関する国際的な研究動向と、最新の教護院史研究動向に関する知見を収集すると共に、上記作業を踏まえた研究中間報告とその検討のための研究会議を開催し、北海道家庭学校に焦点をあてた教護院史刊行ための草稿の作成準備を進める。
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