2018 Fiscal Year Annual Research Report
An International Comparative Study of Alternative Education as the Learning Opportunity for At-risk Youth
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18H00972
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 武俊 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (50451498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 徹 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (00532087)
大桃 敏行 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (10201386)
井本 佳宏 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (10451501)
金井 里弥 仙台大学, 体育学部, 講師 (10734840)
下村 一彦 東北文教大学, 人間科学部, 准教授 (40389698)
柴田 聡史 琉球大学, 地域連携推進機構 生涯学習推進部門, 准教授 (40721882)
白幡 真紀 東北大学, 教育学研究科, 博士研究員 (70746552)
高橋 春菜 盛岡大学, 文学部, 助教 (80781418)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オルタナティブ教育 / 困難を抱えた若者 / ガバナンス / オレゴン州ポートランド / 公立通信制高校 / オルタナティブ・プロヴィジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な研究成果として、以下の2点を挙げることができる。第一に、本研究の全体的な方向性に関連して、困難を抱えた若者に対する学習機会を公的に整備することの可能性と課題について検討し、その成果を日本教育学会第77回大会課題研究Ⅰ(2018年8月31日)において発表したことである。ここでは、公教育が多様性を通じた学びの場であってこそ正当性を持ちうる一方で、そこでの学び自体に苦しみや困難を抱える者が実際に存在する以上、そうした「切実な要求」への応答である限りにおいて「別の学びの場」は公的に支援されるべきこと、併せて、そうした学びの場の質保証と生徒の適切な接続を保障するワンストップ・サービスの整備も求められることを述べた。 第二に、国内・国外調査の順調な進展と研究成果の公表である。国内調査では定時制・通信制高校の実態調査および困難を抱えた若者への支援を行っているNPO等への訪問調査を行うとともに、公立通信制高校の現状および意義と課題について東北教育学会第76回大会(2019年3月16日)にて研究発表を行った。また、国外調査については、オレゴン州ポートランド市への訪問調査を実施するとともに、その研究成果を東北大学大学院教育学研究科『研究年報』第67集第1号に掲載した。本論文では、同市において、若者の困難の多様性に応じた公立・私立のオルタナティブ学校が多元的・重層的に準備されているだけでなく、それらに若者をつなぐシステムも公的に整備されていることを明らかにした。さらに、英国については、国内ではほとんど研究がなされていないAlternative Provisionsという困難を抱えた若者への学習機会の実態について東北教育学会第76回大会(同上)で報告を行った。さらに、アジアについては、韓国におけるオルタナティブ教育の現状についてアジア教育学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の成果として、学会発表4件と論文1件の成果を挙げることができた。 発表のうち1件は、国内最大規模の学会の大会企画での報告であり、200名近い参加者に対して本研究課題の成果と意義を幅広く伝えることができた。特に、若者を適切な学習機会に接続するためのワンストップ・サービスの整備は、「生き方の幅」としてのケイパビリティの保障に通じるというアイデアについては、概ね好意的な評価を得ることができた。また、本発表を通じて研究課題に関連した情報を参加者から頂戴し、なかには今後の調査研究の発展に結びつくものもあった。こうした招待企画での発表は当初の予定にはなかったものであり、研究としては順調な滑り出しをすることができた。 公立通信制高校の研究では、私立の広域通信制高校への注目が高いなかで、比較的安価に学ぶことができる公立通信制高校の全国における設置状況を整理して示しただけでなく、近年新設された公立通信制高校の教育内容も分析し、教育機会の平等の観点から考察を加えている点でオリジナリティの高い成果を挙げることができた。よって、国内調査は順調に展開することができた。 国外調査については、英国のAlternative Provisionsに関して、その役割・機能の詳細はほとんど明らかになっていなかったため、今回の調査でその実態を明らかにするとともに、初年度中に発表することができた。また、米国オレゴン州ポートランド市を事例とする研究については、初年度中に論文として公表することができた。さらに、アジア調査についても、韓国におけるオルタナティブ教育の最新動向を発表することができた。これらは順調な進展と言うことができる。 以上より、全体として順調に研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては以下の2点を考えている。 第一に、予定通り国外調査を実施するだけでなく、本研究課題に関心をもつ研究協力者の参加を促し、さらなる発展を期することである。まず、米国調査については、ケンタッキー州ジェファーソン郡への訪問調査を実施する。ケンタッキー州はオルタナティブ教育に対する独自のアカウンタビリティ基準を設けている事で知られていること、またジェファーソン郡では困難を抱えた若者への学習機会提供とそのためのワンストップ・サービスを学区が整備していることで知られていることから、本研究課題の調査先として最適であると考えられる。次に、ヨーロッパ圏については、イギリス調査が先行しているが、イタリア・ドイツ調査の成果を関連学会で発表していく予定である。最後に、アジア調査については、韓国・シンガポール調査をさらに進展させるとともに、必要に応じてこれら以外の諸国への調査も検討する。 第二に、国内調査については、本研究課題に関心を持つ大学院生等の協力を得て、貧困家庭の生徒の生活支援とともにフリースクール等の学習機会提供も行っているNPO等への訪問調査を強化し、福祉的支援と学習機会提供とを切れ目なく提供する団体の役割・機能、および行政との関係の在り方について分析を進める。また、定時制・通信制高校に限らず、民間団体との連携を通じて、生徒に学校内居場所の提供を行っている事例も分析の視野に入れていく。
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