2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis and geometry of fractals and stochastic processes on them from field-transverse viewpoints
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18H01123
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梶野 直孝 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (90700352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 大典 京都大学, 情報学研究科, 講師 (00647323)
中島 誠 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (60635902)
田中 亮吉 東北大学, 理学研究科, 助教 (80629759)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フラクタル上の解析学 / フラクタル上の確率過程 / Liouville Brown運動 / ランダム媒質中のディレクティドポリマー / 自由エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は研究代表者の梶野が中心となり,研究計画調書に記した研究課題のうち課題(6)「Liouville Brown運動の解析」および課題(5)「フラクタル上の拡散過程を土台にした統計物理モデルの解析」について解決に向けた検討を行った. (6)については,梶野が2018年9月にUniversity of CambridgeのS. Andres氏及びJ. Miller氏を招聘,さらに2019年3月にUniversity of Cambridgeを訪問して両氏と議論を重ね,Liouville Brown運動のようなランダム環境中の拡散過程に対し上からの劣Gauss型熱核評価を導くための一般論を構築するとともに,これをLiouville Brown運動の場合に適用することが(ランダムネスの空間的相関の強さを表す物理パラメータがある特定の値の場合については)可能であろうとの感触を深めた.さらに下からの熱核評価についても考察を深め問題点の整理を行った. (5)については,研究分担者の中島はランダム媒質中のディレクティドポリマーを無限に拡張したSierpinski格子グラフの上で考察し2種類の相転移が定義できることを示した.これと並行して梶野は神戸大学理学研究科博士課程前期課程に在籍中の小西航生氏の協力の下でEuclid整数格子におけるランダム媒質中のディレクティドポリマーに関する既存の研究を精査し,フラクタルグラフの場合へと拡張できることが期待される空間1次元のモデルに対する自由エネルギーの高温層での上下評価のうち,上からの評価については証明の詳細を把握した.下からの評価についても証明を仔細に検討するために必要な準備はほぼ終えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず課題(5)「フラクタル上の拡散過程を土台にした統計物理モデルの解析」については,研究分担者の中島の尽力によりランダム媒質中のディレクティドポリマーの自由エネルギーの挙動を調べる問題がSierpinski格子グラフ上で意味をなすことが示され,梶野も小西航生氏の協力によりこの問題の解決のために必要な背景知識の習得を着実に進められたなど,ほぼ計画通りに進展していると評価できる. 一方課題(6)「Liouville Brown運動の解析」については,上からの劣Gauss型熱核評価は想定していた通りの方針で証明できる目処が立ったものの,下からの熱核評価については2018年度当初に想定していたのとは大きく異なる現象が実際には起きておりこれが証明のための本質的な障害になっていることが判明した.この観察は現象のより正確な理解が得られたという意味で研究の進展には違いないが,目標とする下からの熱核評価を得るために本質的な問題の解決が必要になったという点で研究の進捗の遅れを意味するものであることも否定できない. また研究計画調書に記したその他の課題についても,国内外の専門家との研究打合せや各地の研究集会への出席により情報収集に努めるとともに解決可能性の検討を続けてはいるものの,当初から計画していた具体的な研究課題に解決の見通しを立てることはできなかった.これらの課題はいずれも既存の研究にはない本質的な困難の克服を要求する性質のものであり解決の見通しが容易に立つようなことは元々想定していないとはいえ,現状の進捗はそうした当初からの想定すらやや下回っていると評せざるを得ない. 以上の経過から,計画通りかあるいは計画に近い形で着実に進んでいる研究課題もあるものの,全体としては進捗はやや遅れていると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
まず課題(5)「フラクタル上の拡散過程を土台にした統計物理モデルの解析」については2018年度中に得られた知見に基づきフラクタルグラフにおけるランダム媒質中のディレクティドポリマーの自由エネルギーの挙動を調べる研究に着手し,中島および小西航生氏と梶野の協力により予想される自由エネルギーの上下からの不等式評価の証明を目指す. 課題(6)「Liouville Brown運動の解析」については引き続きUniversity of CambridgeのS. Andres氏及びJ. Miller氏を招聘あるいは訪問して議論を重ね,上からの劣Gauss型熱核評価の証明を完成させるとともに下からの熱核評価についても解決を目指して検討を続ける. 研究計画調書に記したその他の課題のうち課題(3)「エネルギー測度」,課題(7)「フラクタル内の領域でのNeumannラプラシアンと対応する反射壁拡散過程のポテンシャル論」については,University of British ColumbiaのM. Murugan氏から密接に関連する研究の近年の進展について聞き及んでおり,そこで同氏を訪問あるいは招聘して重要問題の解決を図る. 残る課題(1)「拡散過程の標本路の大域的幾何構造」,課題(2)「領域上の調和測度」,課題(4)「Klein群の作用で不変なフラクタルにおけるラプラシアンの群論的・3次元双曲幾何的意味付け」については,引き続き国内外の研究集会に出席して近年の研究の進展に関する情報の把握に努めるとともに,研究分担者の白石,田中と梶野の間での研究打合せにより当初から想定していた具体的な問題の解決および新たな重要課題の発見に向けて努力する.
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