2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01210
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
佐藤 丈 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60322294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下村 崇 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (00447278)
荒木 威 工学院大学, 工学部, 講師 (40645884)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レプトンフレーバー / ミューオン / 超対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノ振動の発見から明らかになったように、レプトンフレーバーは厳密には保存していない。しかし素粒子の標準理論においてはレプトンフレーバーは厳密な保存量である。したがってレプトンフレーバーの破れが存在する理論に拡張されなければならない。破り方は多種多様でありどれが良いのかよく分かっていない。また標準理論は暗黒物質の候補も含んでいない。さらにバリオン数が生成されないという問題がある。そして素粒子の理論家は忘れがちだが、宇宙初期において合成されるリチウムの量が標準理論の予言と異なるという問題もある。 したがってこれらの課題をどのように解決するのか探る必要があるが、全3者(レプトンフレーバーの破れと暗黒物質の存在とバリオン数の問題)を解決する理論として超対称標準模型に右巻き型ニュートリノを導入した模型というのがあり、他にも興味深い性質を持つのでよく調べられている。 本研究では、この枠内でさらに元素合成においてリチウムの量を標準理論に比べて減らすようなパラメタ領域があるのかについて調べた。元素合成の時期まで標準理論には含まれない粒子が存在する、つまり素粒子の感覚で言うと「安定な」粒子が存在する、事を要求することなどからパラメタ領域に大変強い制限が付くが、かろうじてそのようなパラメタが存在することを確かめ、さらにこの枠内で現在行われている実験に対してどのような予言がなされるのかについて調べ、論文として発表した。 また、レプトンフレーバーの破れを見る実験であるCOMET実験の提案書の執筆にも携わり、それもarXivには登録され、近いうちに出版が見込まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文として発表したのは二編であり、内容的には申請書のトップダウンのアプローチと実験へのアプローチに対応する。 論文としてはまだまとまっていないが、ボトムアップのアプローチについてもLμーLτ模型において、どのような粒子を導入するのが良さそうであるかなど枠組みは出来上がったので、年度内に発表する目処は立っている。 さらに実験へのアプローチとしては、既存の実験に対するアプローチとしてCOMET実験へのさらなる貢献を目指し、深層学習の方法を使ってデータの解析がどの程度成功するのかについて調べているが、これについても第一論文の制作に取りかかったところであり、順調に推移していると考える。さらに、我々がかつて提案したμ+e -> e+eという反応についても、実際の実験の設定を考慮しどの程度有効かについて検討できるところまで来た。これについては、背景事象については従来の実験において考慮されているものを参考に何があるかを考えているが、研究が進むにつれて考えるべき背景事象が増えてくると思われる。したがってかなり慎重に研究を進めているが、今のところは想定の範囲内の進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは目処の立っている課題について最後まで仕上げることを目指す。 具体的には、LμーLτ模型について実験から要求される性質をニュートリノが満たすことを確認しつつ、IceCubeのニュートリノ観測をうまく説明するようなパラメタ領域があることを確認する。そしてその理論の帰結として一般には軽い粒子が予言されるが、それらがビームダンプ実験などで観測されるものかどうか、について確かめる。 もう一つは、深層学習の手法がCOMETの実験データの解析に有効であるかどうかを確かめることであるが、COMETで想定されている解析の手順に倣って三段階での解析を行う。具体的には、背景事象がある中から電子の信号の部分を取り出せるか、その電子の信号のうち一種目の軌道だけを取り出せるか、そして電子のエネルギーを正しく見積もることが出来るか、の三段階である。このうち初めの二段階についてはCOMETの従来の方法より良い解析結果が出ているので、細部を詰めることで論文にすることを目指す。第三段階は現状では目処が立っていないが、年度中には来年度には論文になることを目指したい。 また、トップダウンのアプローチについても、昨年度出版した論文の続きとなる事について研究しているので、出版まで行くかは微妙だが、来年度には出版できる目処が立つところまでは内容を詰める。
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Research Products
(11 results)