2019 Fiscal Year Annual Research Report
大型レーザーを用いた磁化プラズマ中を伝播する無衝突衝撃波の生成実験
Project/Area Number |
18H01232
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山崎 了 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40420509)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 太智 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (30726401)
富田 健太郎 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (70452729)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 無衝突衝撃波 / 実験室宇宙物理学 / 宇宙線 / 大型高強度レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、6月と8月にそれぞれ1週間程度、大阪大学レーザー科学研究所に滞在し、合計31ショットを行った。希薄(5 torr)窒素ガス中において異常放電することなく、イオンを十分磁化できる強磁場発生装置(電流 6 kA, 磁場強度 3.6 T, 空間領域 3 cm)の開発に成功した。そしてそれを大型レーザー実験に導入した。また、微弱なトムソン散乱電子項の検出感度を改善すべく、ノイズ成分(発光)とトムソン散乱光を、偏光を用いて分離する光学系の改良を進めた。光軸調整だけでは困難な散乱光の偏光方向制御を、波長板を追加することで可能とし、ガス散乱によりその効果を確認した。
さらに、実験とほぼ同じ状況下での1次元プラズマ粒子シミュレーションを行い、実験結果と比較した。その結果、背景磁場の存在によってイオンのダイナミクスが変化し、プラズマの温度・密度構造が背景磁場なしの場合と明確に異なる様子を確認できたと考えている。現在、得られた成果をまとめて論文発表する準備を進めている。
また、本研究に広く関連する研究として以下を行った。(1)超新星残骸やガンマ線バーストといった天体での放射機構について観測データの解析研究や理論研究を行い、衝撃波散逸や粒子加速機構について考察した。(2)大阪大学レーザー科学研究所の施設において同じ大型レーザーを用いて磁気リコネクションの実験を行い、同過程において開放された磁気エネルギーがプラズマの運動エネルギーに変換される様子を捉えた。(3)無衝突衝撃波の2次元プラズマ粒子シミュレーションを行い、背景磁場に垂直方向の温度上昇が衝撃波のソニック・マッハ数の自乗に比例することを導いた。このシミュレーション結果は2020年度の本実験によって確認可能であり、実験の良い作業目標となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本基盤研究の達成目標として掲げた「外部磁場3T以上の印加とトムソン散乱計測の共存」を本実験において研究期間2年目にして達成することができた。実際、1ショットだけだったが、レーザートムソン散乱法を用いて外部磁場を印加した状況下で衝撃波前駆体のプラズマ構造の時空間変化や電子温度・イオン温度・電子密度等のパラメータ計測をすることに成功した。特にトムソン散乱計測においては、イオン項及び電子項の同時計測に向けた光学系の改良を行ったことで、様々なプラズマ物理量(電子密度・温度、イオン価数、イオン温度、ドリフト速度)の空間・時間分解計測が実行できる基盤を強化することができた。
以上により、磁化プラズマ中を伝播する無衝突衝撃波の生成実験の実験デザインや準備方法を確立できたと考えている。最終年度となる3年目に向けて、磁化プラズマ中を伝播する無衝突衝撃波の生成と粒子加速の理解に重要なデータを取得できる態勢が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度も大阪大学レーザー科学研究所の共同利用に申請した実験提案が採択され、9~10月に実験を行うこととなった。計測タイミングを変えたショットを20~30ショット行い、電子密度、電子温度、イオン温度、衝撃波速度などのデータを取得する。
外部磁場を印加したショットの数をふやすため、コイルの絶縁対策を進め、また、故障したらすぐに別のものに交換できるように複数台の磁場発生装置を製作して本実験にのぞむ。また、昨年度の実験では小型磁気プローブをショット時に導入して磁場の直接計測に挑戦したが、プローブの置く場所が不適当であったため、計測に失敗した。2020年度はプローブの配置を工夫することで磁場の直接計測も達成したい。
さらに、トムソン散乱計測では、イオン項だけでなく、電子項のスペクトルも取得し、パラメータ決定の精度を向上させる。大型レーザー実験では限られたショット数で、多くの情報を得ることが必要となる。現行のトムソン散乱システムでは1次元空間分布情報を一度の計測で得ることができるが、その視野範囲はレーザーに沿って集光点前後3mm程度であり、周辺部のプラズマ挙動を得ることができない場合がある。散乱光のレンズ転送系を改良し、計測可能な視野範囲の拡大を図る。
|
Remarks |
山崎了:第25回物理学会論文賞を受賞(2020年3月)。 富田健太郎:文部科学大臣表彰(若手科学者賞)(2019年4月)
|
Research Products
(32 results)