2019 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの古代湖「琵琶湖」の固有種成立過程の解明のための総合的研究
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18H01330
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
高橋 啓一 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 館長 (50139309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山川 千代美 (木田千代美) 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 上席総括学芸員 (30344344)
里口 保文 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 総括学芸員 (20344343)
林 竜馬 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (60636067)
渡辺 勝敏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00324955)
田畑 諒一 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 学芸技師 (00793308)
山本 正伸 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (60332475)
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
仲谷 英夫 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (20180424)
三浦 収 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (60610962)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東アジア / 古代湖 / 琵琶湖 / 固有種 / 古琵琶湖層群 / 古水系 / 分子系統学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の各研究班の進捗状況は次のとおりである。【古地理班】琵琶湖地域の水系の変遷過程を明らかにするため、水系の変化が起こる重要な時代である甲賀層と蒲生層の境界付近の時代を調べるために滋賀県湖南市附近の地質調査を行った。その結果、甲賀層の最上部付近で、すでに流出水系が現在と同じ西方向に向いていた可能性がでてきた。【植生史・古気候班】古琵琶湖地域の化石林の調査結果の整理や現地調査を行い、古琵琶湖層群の大型植物化石の研究史をまとめると共に、その水辺の古植生変遷についても考察を行った。特に、多賀町四手での発掘調査から、190~180万年前の水辺の植生を復元できた。また、中国南部のスイショウ湿地林の調査結果を論文化し,それを琵琶湖誕生期の化石林と比較することで、この時代にスイショウが優占する湿地林が存在したことを明らかにした。花粉分析の研究からは、琵琶湖地域における氷期-間氷期変動に対する森林生態系の変遷と日本海環境の変化との対応関係を明らかにした。【陸上大型動物班】古琵琶湖周辺の動物相の変遷過程を明らかにする一環として、大阪湾から瀬戸内海にかけての地史と動物相を整理した。その結果を日本の動物相の変遷の特徴と共に研究会において口頭発表した。【水棲生物班】琵琶湖及び周辺域の魚類や貝類の進化史を描き出すために、様々な分子遺伝解析を行った。琵琶湖および周辺域の淡水魚類の種分化、分布域形成、適応に関しては、ミトコンドリアDNA、MIG-seq、RAD-seq、3D画像解析などの手法を用いて研究し、論文および学会発表にて成果を公表した。また、琵琶湖のカワニナ類に見られる特異なミトコンドリア変異の全容を明らかにすべく、琵琶湖のカワニナ類のミトコンドリアDNAに関するデータ収集を行った。上記の魚類や貝類以外にも、サワガニやテナガエビといった甲殻類についても、同様な研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度おこなった古琵琶湖の地史及び動植物相研究の総括に基づいて、2年目の研究を進めることができた。成果を学術雑誌や学会で発表できたことで、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
古地理班では、近江盆地からの流出水系の変化時期を検討するために,滋賀県甲賀市付近において,古琵琶湖層群甲賀層~蒲生層の地層を詳細に調査し,古流向からその当時の水系に関する推定を行う.また,その結果およびこれまでまとめている地形変化およびそれに伴う水系変化との関係について再検討を行う.このことによって,近江盆地(古琵琶湖堆積盆)と大阪~京都および伊勢湾周辺地域~中部山岳地域との水系変化について検討を行う. 植生史・古気候班では、引き続き鮮新世以降の古植生と現生植生との比較をすすめる.特に、古琵琶湖における水生植物ヒシ属の変遷を捉えながら、遺跡から出土したヒシ属や現在のヒシ属と比較し、約400万年間の変遷を明らかにする。 陸上大型動物班では、新たに見つかった約260万年前の大型のナマズ化石のX線CTによる形態解析を行い、琵琶湖のナマズ類の進化を考察する。また、古琵琶湖から産出しているゾウ類やシカ類の臼歯表面のマイクロウエア解析を継続し、植生と動物相の関係を考察する。 水棲生物班は、琵琶湖産魚類についての核ゲノムデータ(縮約的データ)の解析を進め、歴史集団動態や集団形成史をこれまでにない精度と信頼性で明らかにしていく。また、カワニナ類については、そのミトコンドリアDNAに関するデータを解析して論文を執筆する。その他、テナガエビ・サワガニについては、日本国内の他地点のサンプルを増やし、データ解析を行い、学会発表論文化を行う予定である。なお、陸上大型動物班の仲谷英夫氏は、大学の定年退職に伴い研究協力者として今後本研究に参加する。また、大槻達郎氏を植生史・古気候班に新たに分担者として参加してもらう。
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Research Products
(16 results)