2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of VN(vanadium nitride)-containing coating film having high-temperature lubricity and its application to machining hard-to*machine materials
Project/Area Number |
18H01349
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
細川 晃 金沢大学, 設計製造技術研究所, 教授 (40199493)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷野 智広 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (20707591)
古本 達明 金沢大学, 機械工学系, 教授 (60432134)
橋本 洋平 金沢大学, 機械工学系, 助教 (30456686)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | コーティング / 窒化バナジウム / 複合膜 / 潤滑性 / 耐熱性 / 切削工具 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多層・複合膜の創成が可能な「対向電極型アーク放電プロセス」を用いて,従来にないバナジウム含有アルミクロム窒化物コーティング膜を創成することを目的としている. 平成30年度は多層・複合膜の創成を行うため,現有のコーティング装置の電極「AIP・FAD置換型蒸着源: VACS-100」に対向させて『直進型磁界フィルタ方式の磁界ステアリング型アークプラズマ蒸発源: MF-ARC3』を増設した.平成31(令和元)年度はこの装置を用いて高温潤滑性を有するVN膜と耐熱性を有するAlCrN膜の多層化に成功し,その機械特性(摩擦係数,硬度,密着強度)を測定・評価するとともに,プリハードン鋼のエンドミル加工に適用した.創成膜は8層構造のMC (Multilayer coating)-8 (RF: AlCrN),116層構造のMC-116 (RF: AlCrN),MC-116 (RF:VN)の計3種類である.ここで“RF”は新規に増設した直進型磁界フィルタ方式(Rectilinear Magnetic Filtering)を用いた膜種を表しており, 成膜レートの違いからこの方式を使用した膜種の含有量が多くなっている. その結果,VN/AlCrN多層膜(MC-8, MC-116)はVN 膜と同様に高温で摩擦係数が低下するが,500℃まで常温硬度を維持しており,高温での潤滑性と優れた耐熱性を示すことがわかった. その後,この多層膜をエンドミルに施して切削実験を行った結果,MC-8 (RF: AlCrN)とMC-116 (RF: AlCrN)は高切削速度においても逃げ面摩耗幅が小さく,工具逃げ面温度も低いことを明らかにした.VNとAlCrNを多層化することによって,潤滑性と耐熱性を兼ね備えたコーティング膜の創成が可能なことが実証できた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31(令和元)年度の研究計画は;(1)VNと組み合わせて多層化する((Al-Cr)N)膜の最適成膜条件を決定する;(2)VNとAlCrNからなる多層膜を創成し,その機械的性質(硬度,摩擦係数,平滑度,母材との密着度),耐熱性, 組成分析, 構造解析を行い,切削工具としての特性を有しているかどうかを確認する;(3)膜内部に(VN, TiAlN, AlCrN)が混在した複合膜の創成を試みる;(4) (2)で開発した多層膜を切削工具に適用し,難削材(プリハードン鋼,Ti合金,Ni基耐熱合金など)の切削加工を行い,工具損耗,切削抵抗,切削温度などからコーティング工具の特性を評価する;であった. (1)については「AIP・FAD置換型蒸着源: VACS-100」および『直進型磁界フィルタ方式の磁界ステアリング型アークプラズマ蒸発源: MF-ARC3』の両電極で成膜実験して決定した. (2)については,8層構造のMC (Multilayer coating)-8 (RF: AlCrN),116層構造のMC-116 (RF: AlCrN)およびMC-116 (RF:VN)の3種類の創成に成功した.そして,(4)については,(2)で創成した3種類のコーティング工具を用い,プリハードン鋼のエンドミル加工に適用した.その結果,AlCrN-richの多層膜(MC-8 (RF: AlCrN),MC-116 (RF: AlCrN))が優れた切削特性を示すことを明らかにした. (3)の複合膜の創成およびTi合金やNi基耐熱合金などの切削加工は実施できなかったが,VNとAlCrNを組み合わせることによって高温における耐熱性と潤滑性を備えたコーティング膜の創成に成功しており,当初の目標は概ね達成できたと考えている. なお,この成果は生産加工分野で世界的に著名な学術誌CIRPに採択された.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度までの研究において,複合膜の創成が可能なコーティングシステムの構築を行い,VN/AlCrN-多層膜の創成に成功するとともに,切削実験によってその有効性を確認した.令和2年度の研究推進方策は以下の通りである. (1) 多層膜の構造(組織)をTEMで同定する.超硬母材表面に高硬度なコーティング膜をもつ材料から極微細なTEM観察用試料を作製することは難しく,令和元年度では成功しなかった. (2) VN/AlCrN-多層膜の密着性を向上する.超硬母材とコーティング膜およびVNとAlCrN膜間の密着性の改善のため,界面に中間層と呼ばれる緩衝層を形成する.また,耐熱性膜としてAlCrN以外のAl含有膜種も検討する.Ti, Mo, Siなどの添加を考えている. (3) 多層膜における各層の最適膜厚を決定する.これまでの研究より,必ずしも超薄膜多層構造が切削工具に適しているという結果になっておらず,個々の膜種の特性が有効に作用するような膜構成を考える.すなわち,多様な膜厚・層数の複合膜を創成し,その機械的・トライボ特性を明らかにする. (4) 令和元年度は8層と116層の多層膜を創成したが,本年度は令和元年度に実施できなかった膜内部に(VN, TiAlN, AlCrN)が混在した複合膜の創成を試みる. (5) (2)(3)(4)で開発した膜種のコーティング工具による切削実験を行い,潤滑性と耐熱性を兼ね備えたコーティング工具の可能性を立証する.加工材料はプリハードン鋼の他,Ti合金およびNi基耐熱合金を用いる.
|
Research Products
(17 results)