2019 Fiscal Year Annual Research Report
トラクションドライブの疲労強度シミュレーションの開発と高精度高信頼性設計の実現
Project/Area Number |
18H01357
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
成田 幸仁 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90431519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 正浩 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80209014)
風間 俊治 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (20211154)
増山 知也 小山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80282094)
長船 康裕 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 講師 (30241409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 機械要素 / トラクションドライブ / 疲労強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
油膜のせん断力で動力を伝達するトラクションドライブの転がり疲労強度とそのばらつきを予測するシミュレーション手法を提案することを目的とする.今年度の前半は,転がり疲労強度シミュレーションプログラムを作成し,その計算結果を前年度に得られた実験結果と比較した. 前年度の多数個の転がり疲労試験結果から,ローラの転がり疲労強度を律するのは転がり方向に平行に働くせん断応力であると仮定した.また,ローラの表面硬さと材料中の介在物寸法をパラメータとした転がり疲労強度予測式も得られた.これらの結果を利用して,ある押付力とトラクション力下でのローラの内部せん断応力を計算し,その値と転がり疲労強度とを比較して損傷を判断するシミュレーションプログラムを製作した.実際の鋼材中の介在物寸法分布を与えたローラをコンピュータ上に再現し,それらに対してシミュレーションを行ったところ転がり疲労強度の標準偏差は昨年度の実験結果と一致した.しかし,転がり疲労強度自体は実験結果の方が300MPaほど高かった.浸炭焼入れによって導入されるローラ表面の残留圧縮応力が転がり疲労強度を向上させている可能性が高いため,実際の試験ローラ表面を電解研磨しつつ残留圧縮応力を測定した.その結果,ローラ表面から0.8mm程度の深さまで,約100MPa程度の圧縮残留応力が存在していることが判明した. 今年度の後半からは,転がり疲労強度シミュレーションの汎用性の確認に取り掛かった.近年,介在物の小径化が図られた清浄鋼が普及し始めている.そこで,清浄鋼を用いてローラ試験片を製作した.その介在物寸法分布を昨年度に導入したデジタルマイクロスコープで観察したところ,密度と介在物寸法の両方が,これまでの試験ローラの半分程度であることが分かった.現在,新しい清浄鋼ローラを用いて,多数個の疲労試験を行っているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した項目の全てに着手し,それぞれ一定程度の成果が得られている. トラクションドライブの転がり疲労強度シミュレーションプログラムは,ほぼ完成状態にある.今後,転がり疲労強度の実験値との差の低減に取り掛かる. 清浄鋼を用いた試験ローラも完成しており,多数個の疲労試験が進行中である.これまでのところ,通常鋼よりも清浄鋼ローラの方が疲労強度が高く,強度のばらつきも小さいという結果となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
転がり疲労強度シミュレーションと実験結果との差の低減を試みる.浸炭焼入れによる圧縮残留応力の影響は,現在のシミュレーションプログラムでは考慮されていない.今年度に測定した圧縮残留応力は100MPaであったが,同条件の浸炭焼入れを施した他の研究報告によると,圧縮残留応力300MPa程度となっている.この値は,現在のシミュレーションと実験結果との差と同程度である.そこで,ローラの圧縮残留応力を再度測定し直し,シミュレーションを改良してローラの内部せん断応力を圧縮残留応力で補正する.これにより,転がり疲労強度の予測精度の向上が可能と考えられる. また,転がり疲労強度シミュレーションの汎用性の確認も継続する.現在実行中である清浄鋼ローラを用いた多数個の転がり疲労試験を完了させ,通常鋼ローラに対する疲労強度とそのばらつきの差を明らかにするとともに,転がり疲労強度シミュレーションによる予測値との比較を行う.さらに,試験ローラの形状を変更してローラ内部応力を変化させる.これによる疲労強度の変化を実験で確認すると共に,転がり疲労強度シミュレーションによる予測結果と比較して,シミュレーションの汎用性を評価する.
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