2019 Fiscal Year Annual Research Report
超高電圧直流真空遮断器の実現に向けた真空アーク現象の基礎研究
Project/Area Number |
18H01419
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊田 亜紀子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20313009)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 優貴 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (00735532)
日高 邦彦 東京電機大学, 工学部, 教授 (90181099)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 真空遮断器 / 二線強度比法 / 発光分光 / 励起温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
真空遮断器の適応範囲を現在広く適応されている交流の中電圧階級から交流の高電圧階級や直流電力網へと拡大するためには、電極間で点弧する真空アークのプラズマパラメータを把握することが不可欠である。プラズマパラメータには電子や中性粒子の温度や密度、電離度など様々なものが挙げられる。中でも、プラズマの温度の指標の一つである励起温度は、分光観測のみでも測定可能なため容易に取得可能であることから測定実績が多い。しかし、集光した光を分光器を用いて解析している研究例が多いため、空間に関する情報や時間に関する情報に乏しいものに留まっている。特に電流変化率が大きくなると予想される直流遮断器内でのプラズマに対しては、先行研究では得られていない高時間分解能なプラズマパラメータ測定が求められる。
本年度においては、高速度ビデオカメラと多結像光学系を使用して、高時間分解能かつ高空間分解能で真空アークの励起温度の測定できる装置を開発し、、直流遮断時の真空アークプラズマを対象に測定を行った。直流遮断時の速い立ち下がり電流が、電極間プラズマの基礎特性に与える影響の解明を試み、特に中性粒子の励起温度を手がかりとして電極材料による差異を明らかにした。使用した銅電極と銅クロム電極では電流ピーク付近ではクロムの比率が小さい接点ほど中性粒子の励起温度が高かった。一方でピークから電流ゼロにかけて約30A/μs で電流が減少する区間では、銅電極では励起温度が低下したのに対し銅クロム電極では電流ピークよりも半分以下の瞬時電流値でも電流ピークより励起温度が上昇することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、多結像光学系と高速度ビデオカメラを用いた、二次元の分光情報を、高速度に測定できるシステムの開発をメインに行い、所望の性能を有する測定装置の開発を完了した。真空アーク消弧現象は、電流i(によるとりうるアークモード)、その変化率di/dt、電極素材など種々のパラメータが複雑にからみあった現象である。当該期間の目的であった拡散アークを対象に、di/dtと電極素材を変化させたうえで、重要なプラズマパラメータである励起温度の高時間空間分解測定データの集積を行うことができ、おおむね予定通り順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
多結像光学系と高速度ビデオカメラを用いた励起温度測定システムは、2線強度比法に基づくもので、電子や励起分子の速度分布がボルツマン分布をとること(局所熱平衡LTE)を前提としている。今後においては。まず、数値シミュレーションを通じて、このLTEの成立範囲を明らかにし、多結像光学系での励起温度測定の結果が妥当な値を示し、十分に緩和された値かの議論を行う。 平行して、消弧時の電子密度、電子温度の測定を行い、直流遮断時の残留プラズマ密度経時変化のモデル化を行う予定である。これらと、消弧時にギャップ間に発生する過渡回復電圧の理論式と比較を通じて、直流遮断器周囲の回路設計の指針を得ていきたい。
|
Research Products
(17 results)