2018 Fiscal Year Annual Research Report
Carbon storage due to aquatic plants in stratification for climate change mitigation
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18H01545
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中山 恵介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60271649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 啓 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (10283970)
矢野 真一郎 九州大学, 工学研究院, 教授 (80274489)
駒井 克昭 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90314731)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CO2 / DIC / TA / stratification / global warming |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年4月に研究分担者である九州大学の矢野教授,島根大学の矢島教授と,九州大学にて研究開始のための打ち合わせを行った.都合で参加できなかった分担者である北見工業大学の駒井准教授とは,別途,同じ4月に北見工業大学にて打ち合わせを行った.研究に必要な観測,実験および数値解析に関する方針を決定した.観測対象は3箇所とした.まず,駒井准教授が担当する北海道東部に位置するコムケ湖において,ドローンを利用したアマモ場の生息範囲の調査,および夏季における採水による溶存無機炭素(DIC)の調査を実施した.矢島教授が担当する宍道湖では,8月と11月に調査を実施し,中海を含めて採水を行いDICの空間分布を得ることができた.矢野教授が担当する八代海では,長崎大学の調査船を利用し,8月に定点での潮汐による変化を調査するための採水によるDICの鉛直分布を計測した.これらの結果は,これまでに詳細な解析を行うことができていなかった,DICの空間分布,および成層を考慮したDICの鉛直分布に関する貴重なデータを与えるものであり,次年度以降での3次元数値計算モデルを用いた解析で利用する予定である.実験については,6月に北見工業大学にてアマモを利用した光合成実験を実施した.光合成実験では,30時間の間,1時間間隔で採水を行い,夜間における呼吸によるDICの増加,および日中の光合成の卓越によるDICの減少を計測することができた.特に,水温も含めた光量子量の変化による光合成によるDICの時間変化をモデル化することができた点が,過去の研究に比較して新たな発見であると言える.一方で,3次元数値計算モデルによる解析については,コムケ湖,宍道湖,八代海においてそれぞれ進行中である.特にコムケ湖では,アマモの光合成によるDICの吸収を考慮したモデルを組み込み,観測結果を良好に再現することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,亜寒帯,温帯,亜熱帯における沿岸域から湖沼までの多様な閉鎖性水域において,水生植物によるCO2の放出と吸収に関する現地計測を行い,一般化を目指して数値計算モデルを展開・拡充し,閉鎖性水域でよくみられる密度成層が作り出すCO2の特異な鉛直分布を考慮したCO2の放出・吸収機構を解明することを目的としている.その中で,今年度は亜寒帯,温帯を中心とした解析を実施した.亜寒帯の代表として選んだのは,北海道東部に位置するコムケ湖(分担者である北見工業大学の駒井准教授が担当)である.コムケ湖は淡水と塩水が混合する汽水湖であり,CO2フラックスの値を決定づけているDICの値が大きく変化するという特徴を有する湖である.まず,ドローンを利用したアマモ場の空間分布計測を実施し,現地でのキャリブレーションも行い,良好な再現性を得ることができた.そして,コムケ湖においてアマモを採取し,室内における光合成実験を行うことにより,水温の影響も含めた呼吸および光合成によるDICの変化速度に関する定式化に成功した.具体的にはJasbbyタイプを利用することが最適であることが分かった.その結果を踏まえて,2018年8月に実施した採水によるDICの空間分布測定の結果を利用し,現在,DICのモデル化を行っているところである.簡単なモデルではあるが,かなりの精度で再現することができることが分かった.一方で,温帯の代表として宍道湖,および八代海における観測も実施した.それぞれ,宍道湖は島根大学の矢島教授,八代海は九州大学の矢野教授が担当した.宍道湖では,コムケ湖よりも詳細な空間分布を計測することに成功した.また,八代海では,成層の効果を考慮することができるDICと密度の鉛直分布の計測に成功した.それぞれ,次年度において詳細な数値解析を実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,昨年度と同様にコムケ湖,宍道湖,八代海において現地観測を行う予定である.ただし,コムケ湖においては,成層場におけるDICの変化・動態を解明するため,表層だけでなく底層における採水も実施し,成層との関係を解析する予定である.宍道湖においては,詳細な空間分布を得ることができていることから,水草場に注目し,水草が存在する領域と存在しない領域におけるDICの詳細な時間変化を計測する予定である.八代海においては,既に成層とDICの関係を詳細に計測できていることから,定点ではなく,八代海を縦断するような密度とDICの鉛直分布を観測する予定である.さらに,亜熱帯における解析を進めるため,China Medical UniversityのTsai准教授と共同で,台湾における湖沼での水草によるDICの減少およびCO2フラックスの推定を試みる予定である.対象とする湖は,過去にAcademia SINICAにより観測が実施されてきているYuanyang Lake(YYL)である.次年度は,それらのデータを利用し,YYLにおける流動と成層の再現を試みた後,DICのモデル化を行う予定である. 一方で,次年度以降は数値計算モデルによる解析に力を注ぐ予定である.まず,詳細なアマモを含む水草モデルの開発を進める.具体的には,分岐などの一般的な水草が有する特徴を考慮できるようなモデルに拡張し,3次元数値計算モデルとのカップリングを行う.カップリングには,連成計算を行うことが容易であるオブジェクト指向型プログラミングを利用することとする.その結果,宍道湖や台湾のようにアマモと異なる分岐を有する水草への適用が可能となるさらに,詳細な水草,成層,そして流れの干渉をモデル化することにより,大きなメッシュサイズを利用する実現象を対象とする湖沼スケールの計算における高精度なDICの解析が可能となる.
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] 波・流れ場とアマモ場の相互干渉解析2018
Author(s)
中西佑太郎, 中山恵介, 中川康之, 茂木博匡, 田多一史, Matthew HIPSEY, 桑江朝比呂
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Journal Title
土木学会論文集B2(海岸工学)
Volume: 74
Pages: 31-36
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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