2018 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク信頼性に基づく自動車の自動運転実用化によるストック効果推計技術の開発
Project/Area Number |
18H01550
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 賢悦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90322833)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 亨 北海商科大学, 商学部, 教授 (80163690)
井田 直人 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (50433420)
宗廣 一徳 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 主任研究員 (00414194)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自動運転 / ネットワーク信頼性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではネットワーク信頼性に着目し、自動車の自動運転技術実用化が社会にもたらす効果を事前評価するための技術開発を行う。本研究では、自動運転技術実用化がもたらす一次的な効果として、①確率的に変動する交通容量の量的・質的改善、②気象災害に対する脆弱性の改善および③道路ネットワークの効率的利用の3つを考えるが、今年度は、①と③に関する技術的な検討を行った。また、②に関しては、実験的・定性的な検討を行った。 具体的には、①に関しては、自動運転自動車間の運転特性が均一化するだけではなく、登坂部でのアクセル制御等も併せて行うことによって、平均交通容量を増大させるだけではなく、その変動を削減できる。このことを踏まえ、交通工学理論に基づき、自動運転車両の普及率と交通容量の関係を解析的に表現した。このように確率分布として表現される交通容量から、ネットワークの移動時間も確率分布として表現可能となる。 ③に関しては、ネットワーク上の自動車は、移動時間の平均だけではなくそのばらつき(時間信頼性)も考慮して経路選択を行うものとして定式化を行った。すなわち、人が運転する車両はその効用が最大化される経路を選択するものとし、自動運転車両は協調的行動をとると考え、ネットワーク全体の効用が最大化される経路を選択するものとして、それぞれの車両の経路選択行動を解析的に記述した。 以上の2点は、今後ネットワークモデル内で表現され、自動運転車両の普及に伴うストック効果推計のために活用される。 一方、今年度はネットワーク上のすべての車両が人が運転する車両である場合とすべての車両が自動運転車両である場合を想定して、自動運転車両が完全普及した場合のストック効果を推計可能なネットワークモデルの開発も行った。このモデルでは、上記③による効果、すなわち自動運転車両によるネットワークの効率的利用による効果を推計している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワーク信頼性に着目し、自動車の自動運転技術実用化が社会にもたらす効果を事前評価するための技術開発を行うことが最終目標である。今年度は、自動運転技術実用化がもたらす一次的な効果として、①確率的に変動する交通容量の量的・質的改善および③道路ネットワークの効率的利用の関する技術的な検討を行い、それらをネットワークモデルに組み込むための見通しを立てることができた。また、また、②に関しては、実験的・定性的な検討を行っており、今後も継続していく予定である。 さらには、ネットワーク上のすべての車両が人が運転する車両である場合とすべての車両が自動運転車両である場合を想定して、自動運転車両が完全普及した場合のストック効果を推計可能なネットワークモデルの開発もおこない、その研究成果としての論文は、現在国際学会に投稿中である。 以上から、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
自動運転車両の普及過程におけるストック効果を推計するためには、その普及率に応じた、①確率的に変動する交通容量の量的・質的改善効果および③道路ネットワークの効率的利用効果を推計する必要がある。また、本研究で考える道路ネットワーク上には2種類の車両(人が運転する車両と自動運転車両)が存在するため、それらの経路選択問題はマルチクラスユーザ問題として定式化されることになる。マルチクラスユーザを扱うネットワークモデルでは、一般的に解の一意性が保証されないことが知られている。もし、解が一意的に決まらない場合、自動運転車両の普及によるストック効果も一意的に決まらないため、解析的な解の一意姓の検証は重要事項である。そのため今後は、開発するネットワークモデルの解の安定性・一意性等の解析的な特性を明らかにする必要がある。さらには、解が一意的に決まる条件を明らかにすることも必要となる。以上の点を検討するための数学的な枠組みは既に存在するため、それらを適用した検討を行うことになる。 マルチユーザクラスを前提としたネットワークモデルに関しては、大規模ネットワークを対象にして効率的に解くためのアルゴリズムは、いくつか存在する。しかしながら、それらを本研究で開発するネットワークモデルにそのまま適用することはできない。そのため、本研究で開発するネットワークモデルを大規模ネットワークに適用可能とする効率的なアルゴリズム開発が必要となる。既存の効率的なアルゴリズムを改良・調整することにより、本研究で開発するネットワークモデルに対する効率的アルゴリズムの開発を行うことになる。
|