2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01758
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩井 一彦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80252261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 和之 岩手大学, 理工学部, 教授 (20250839)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電磁流体力学 / 混相流 |
Outline of Annual Research Achievements |
強度や耐食性など、様々な特性を向上させるために、金属材料は種々の元素を加えて合金とすることが多い。 しかしながら、鋳造中に元素が不均一に分布してしまい、その特性を十分に発揮でないことがある。鋳造中の液体金属の流れの抑制がその防止に有効である。そこで、鋳造中における固液混相への磁場印加が、流動抑制にどの程度影響を与えるのかを明らかにする。 今年度は円管と導電性流体との電気伝導度の差に着目し、その差が磁場印加による流動抑制効果に及ぼす影響を調査した。具体的には、管内にデンドライトを模擬した棒状導電性固相を設置された円管を作製し、そこへ導電性流体として錫を流通させた。棒状固相には電気伝導度の高い銅、円管には銅と絶縁性のセラミックスを採用した。実験では、溶融錫に磁場印加することで、円管の材質によらず錫の流速は抑制された。特に円管材質が銅の場合、工業的に大規模な装置にも印加可能な磁束密度 0.3 T 程度の磁場強度でも、流動が5割強も抑制されることが確認できた。また、銅円管を採用すると、セラミックス円管と比較して小さな磁束密度でも、錫の流動抑制効果が大きくなることが明らかとなった。さらに、円管内に設置する導電性の円柱の本数及び設置位置を変えることで、誘導電流の分布の違いによる流動抑制効果についても調査した。磁場無印加条件では、銅棒の設置位置によらず等しい流速であったが、磁場印加することで、溶融錫の流速は抑制された。しかしながら、銅棒の設置位置による流動抑制効果については明瞭な差異を確認できなかった。加えて、数値解析の結果から、流動方向の磁場分布が必ずしも無視しえない可能性が見いだされた。これは産業への適用を考えた場合、重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁場無印加条件で、流動が乱流ではなく層流となる条件を求め、できる限りその条件下で実験を行うこととした。一方、電磁流体力学の教えによれば、パイプ内を流れる溶融金属に磁場印加した時の流動抑制効果はパイプ壁の電気伝導度に依存することが明らかになっている。そこで、溶融錫よりもはるかに電気伝導度の良い銅、あるいは電気的絶縁体とみなせるセラミックスを固相として実験を行った。数値解析も実験と同様の解析対象を採用した。金属あるいは合金の固相の電気伝導度と液相の電気伝導度の差は、上述の液相錫と固相銅、あるいは液相錫と固相セラミックスとの電気伝導度の差異より小さいので、実験あるいは数値解析で得られる結果の中間に実現象はあることとなる。そして、得られた実験結果と解析結果とを比較・検討することで、磁場による流動抑制効果の物理的解釈を行う。現在は、それらの結果を取りまとめている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
大型製品を対象とした鋳造プロセスでは、鋳造中の固液混相領域に均一な磁場を印加することは困難である。すなわち、実プロセスでは必ず、磁場勾配が存在するとみなしてよい。しかしながら、磁場勾配が流動に与える影響はほとんどわかっていない。そこで、今年度は、昨年度行ってきた、固相と液相との電気伝導度の差が固液混相流れに与える影響を調査するとともに、磁場勾配が模擬的な固液混相流れに与える影響についても調査する。具体的には、模擬的な固液混相領域を、磁場勾配がある箇所に設置した場合と、磁場勾配がない箇所に設置した場合との違いを調査する。また、今まで行ってきた研究においても、実験装置の都合上、液体金属流の向きを正としたときに、正の磁場勾配と負の磁場勾配の両方が存在した。そこで、これらのデータも用いて、磁場勾配が流動に与える影響を明らかにする。
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