2019 Fiscal Year Annual Research Report
遠心制御熱対流による分子反応促進と迅速多項目遺伝子測定法の開発
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18H01798
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
斉藤 真人 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80457001)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遠心熱対流 / PCR / microfluidics |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、微小領域内での熱対流生成可能なマイクロリング流路構造、熱源形状について、遠心温調場における熱流体シミュレーション解析によって、集積化に伴う流路間熱干渉を考慮したデバイス設計指針を得た。これをもとに、増幅反応のためのマイクロ流路構造を楕円構造とし、熱源形状は2つの環状フラットヒーターブロック、またそのエッジに突起構造を有する形状とした。チップ素材はCOPを用いて、射出成型および熱圧着によって流路チップ化した。ラバーヒーター上に環状フラットヒーターブロックを配置した回転温調装置を作製した。これらを用いて流路内の流体挙動観察を行ったところ、流体解析同等の流体挙動を示し、回転速度の変化によって熱対流速度が変化することを確認できた。このことは、PCRの熱サイクル時間を制御できることを意味し、伸長時間の最適化を行うことが可能である。カルバペネム耐性遺伝子の1つであるblaIMP-6を指標としてオンチップPCRを行った。アニーリング・伸長反応にかかる供給熱源温度、熱対流速度と回転速度(相対重力加速度)の関係を検証し、チップ流路内の遠心熱対流DNA増幅にかかる条件導出およびDNA増幅に成功した。さらに、初期濃度16090~16.090 ag/chamber のダイナミックレンジにて検出可能であった。また、電気泳動にて増幅産物を確認したところ、159bpの特異的バンドを確認できた。また非特異産物は見られなかった。これらのことから、本研究で作製した集積PCRデバイスによって、流体制御によるDNA増幅反応促進が可能であることが示された。また、blaIMP-6、blaNDM-1、blaOXA-23の薬剤耐性菌遺伝子の同時検出にも成功し、同時多項目検知も可能であることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロ流路内においてDNA分子の増幅反応を行うために、DNA変性温度と伸長反応温度の2温の供給が必要である。固定した2つの熱源に、反応液を交互に接触させることで、反応を高速化できる。異なる2温を要する微小反応場の集積と安定した熱対流生成のためには、流路間の熱干渉の影響を考慮することが重要である。シミュレーション解析を行った結果、流路間に熱干渉が生じない条件が導出され、これに基づいてマイクロ流路チップ及び回転温調装置を作製し、熱対流生成とDNA増幅が可能であることを確認できた。遠心熱対流によるDNA増幅条件の最適化を行い、カルバペネム耐性遺伝子の1つであるblaIMP-6を指標とした検量特性を得ることができた。さらにはblaNDM-1、blaOXA-23の薬剤耐性菌遺伝子の同時検出も可能で、同時多項目検知も可能であることを示せた。よって研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ流路の集積と遠心促進熱対流の生成を両立するため、流体シミュレーション解析を行った。デバイス設計指針を得るとともに、楕円形流路および高温・低温熱源形状を設計し、実機試作することができている。今後は、これらデバイスをベースに、引き続き以下の項目について検討を行い、微小空間における熱流体制御とその応用実証を進める。 (1)考案した流路形状パターンの熱対流およびDNA分子増幅反応の実証と条件最適化を行う。 流路形状について、楕円形周回流路とし、流路の3次元的な対称性の影響を検証する。得られた結果をフィードバックし、最適な流路形状を設定する。 (2)集積流路チップの流路形状に応じて、ヒーターヘッドの再設計・試作を行う。シミュレーション指針より、流路チップとヒーター間の接触条件が影響することが明らかとなっている。伝熱ロスの少ないヒーター構造設計とチップ固定方法を検討する。 (3)薬剤耐性遺伝子種や腸内細菌遺伝子種などをモデルに、多項目検出の実証を行う。温調、回転速度などの遠心熱対流条件と、流路表面処理、プライマー・酵素濃度などの増幅反応試薬条件をあわせ、個々の遺伝子増幅反応と検知に適した条件導出を行う。
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Research Products
(8 results)