2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脳組織特異的染色による先進的3D神経病理学の確立
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18H02105
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田井中 一貴 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80506113)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 透明化 / 3Dイメージング / 神経病理 / ケミカルプローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、組織透明化に適した種々の染色手法を確立することで、次世代の3次元神経病理学を実現することを目的としている。特異的染色技術による3次元神経病理学を確立するためのアプローチとして、免疫組織化学的染色法と低分子蛍光プローブによる染色手法が挙げられる。後者は抗体に比べて拡散係数も高く、有機合成化学による機能化も容易であることから、比較的大きなヒト脳組織への拡張性が期待できる。しかしながら、現在までに開発された全ての透明化手法において、蛍光プローブの応用性は極めて限定的であり、未だに核染色剤や一部の蛍光色素しか適用できていない。以下にヒト組織と蛍光プローブの課題を示す。課題1:現行の透明化手法で生じるヒト脳組織の褐変による低い可視光透過率、課題2:リポフスチンや残留血液などによる広い波長領域における強度の自家蛍光、課題3:透明化処理中の屈折率調整過程における蛍光プローブの解離、課題4:透明化処理過程により蛍光プローブの染色パターンが劇的に変化 本年度は、上記課題1・2の組織側の光学的課題を克服するために、透明化ヒト脳組織の褐変を抑制することで可視光透過性の向上を図るとともに、組織の自家蛍光を高効率に褪色させる透明化プロトコルの開発に取り組んだ。ヒト脳組織の透明化プロトコルは、組織の外液浸透性を亢進させるための脱脂処理と、外液-組織の屈折率の均一化を図る屈折率調整の2段階からなる。脱脂処理では、高温で処理するため、メイラード反応様に組織が褐変する。メイラード反応に伴う架橋反応を、還元剤やシッフ塩基捕捉剤を含む脱脂試薬を用いることで効率的に褐変を抑制することができた。また、興味深いことにこれらの化学処理を施したヒト脳組織は高度に自家蛍光が褪色していることが示された。この結果より、ヒト脳組織を蛍光色素により標識する技術基盤が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、課題1:現行の透明化手法で生じるヒト脳組織の褐変による低い可視光透過率、課題2:リポフスチンや残留血液などによる広い波長領域における強度の自家蛍光、に関する組織側の光学的課題の克服に成功した。500 nm前後の光透過率が向上したことで、マルチカラーイメージングの基盤が確立された。また、組織全域における様々な自家蛍光因子の褪色を実現したことで、複数の波長領域において特異的な蛍光標識が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
透明化試薬の改良の結果、ヒト脳剖検サンプルの光学的課題である1)透明化後の褐色状の呈色、2)リポフスチンに代表される強度な自家蛍光、を効率よく抑制する透明化プロトコールが得られた。次年度では、屈折率調整による染色色素の解離を防止するために、染色後にホルマリンによる追加固定が可能なアミノ基を有する蛍光色素のスクリーニングを行う。剖検脳サンプルを用いて染色プロファイリングを行うことで、脳組織の構成因子及び病変マーカー特異的な蛍光プローブの開発に取り組む。色素の結合指向性だけでは、特異性が不十分な場合が予想される。そこで、色素とリガンドの2官能性プローブを前提とすることで、標的特異性を担保する。また、これまでに我々は複数の褪色プロトコールを開発した。個々の褪色プロトコールにより、ヒト脳組織の化学的環境は異なることが予想される。褪色プロトコールごとの染色プロファイリングを実施することで、染色特異性の向上を検討する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Chemical Landscape for Tissue Clearing Based on Hydrophilic Reagents.2018
Author(s)
Tainaka K, Murakami TC, Susaki EA, Shimizu C, Saito R, Takahashi K, Hayashi-Takagi A, Sekiya H, Arima Y, Nojima S, Ikemura M, Ushiku T, Shimizu Y, Murakami M, Tanaka KF, Iino M, Kasai H, Sasaoka T, Kobayashi K, Miyazono K, Morii E, Isa T, Fukayama M, Kakita A, Ueda HR.
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Journal Title
Cell Rep.
Volume: 24
Pages: 2196-2210.e9
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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