2018 Fiscal Year Annual Research Report
バラ生産群落における生産性低下要因のSDモデルを用いた解析と施設環境管理の最適化
Project/Area Number |
18H02197
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 元章 京都大学, 農学研究科, 教授 (40164090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 丹十郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40195938)
稲本 勝彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, ユニット長 (50223235)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 園芸科学 / バラ / 生育シミュレーション / 炭素収支 / システムダイナミクスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
アーチング栽培した‘スイートアバランチェ’群落を解析対象とし,折り曲げ枝および収穫枝の1日の炭素獲得量,到花日数と生育指数,収穫枝への乾物転流量を予測するサブSDモデルを,Vensim ver.6を用いて構築・検証・修正した. 折り曲げ枝の炭素獲得モデルの検証行ったところ,季節を問わず予測値は実測値よりも大きくなった.そこで,a値(暗呼吸速度)に関しモデルを修正したところ,夜間の誤差は十分に小さくなった.また,昼間の誤差は,午前中のPPFDが増加する時間帯において大きく,光合成誘導反応や水ストレス等の複合的な要因が関係している可能性が考えられた. 収穫枝群落については,3つの生育ステージにおいて炭素獲得モデルを構築した.今後生育指数に対する炭素獲得モデルに改良する必要がある.なお,光合成の適温域は当初25-30℃にあり,収穫枝の生育に伴って低下し,開花時には20℃付近にあることが明らかとなった.また,晴天日の光合成による炭素獲得量は,発蕾前まではマイナスで,開花時には1日当たり470 mg/plantと予測された. 収穫枝の生育期間中の平均温度と到花日数の関係を指数近似することで開花日が高精度で予測でき,品種が異なっても同一のモデルで予測できることを検証した.また,日生育指数増加量を算出するモデルを構築した.生育指数に対する折り曲げ枝から収穫枝への転流率の変化を二次関数により関数化し,炭素の転流量を予測するモデルを作成した. LAIは,春から夏には3.5-4.0,秋から冬にかけては3.5-3.0で季節変動した.また,個葉の光合成測定から,高濃度二酸化炭素条件下では,馴れによる光合成速度の低下が起こることを明らかにし,二酸化炭素施用の効果は60日程度でほぼ消失した. 各サブSDモデルを統合して炭素の動きを可視化する統合SDモデルの構造を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究打ち合わせの検討会を7月に開催して役割分担を確認し,これまでの基盤研究(B)により開発してきたシステムダイナミクスモデルをベースとして研究を展開したことから,年度当初は順調に研究が進行した. ただし,平成30年12月に発生した赤外線ガスアナライザー(LI-7000,LiCor)の故障により,高二酸化炭素時の光合成の馴れの評価の検討が平成31年度に持ち越されたが,その後器機の修理が完了して令和1年6月には測定を完了,当初の計画がおおむね完了したことから,「おおむね順調に進行している」と判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
折り曲げ枝群落の炭素獲得を予測するサブSDモデルについては,午前中のPPFDが増加する時間帯において光合成速度の低下が起こっており,この誤差の約30%が光合成誘導反応により説明されると考えられる.残りの誤差については,ハウス内の温度上昇と湿度低下がもたらす水ストレスが関係すると考えられることから,この点を検討して誤差が生じている原因を明らかにするとともに,モデルを修正して高精度化を図る.加えて,光合成を低下させている要因を抽出し,その改善がどこまで可能なのかを明らかにする. 収穫枝群落の光合成による炭素獲得モデルについては,生育指数をベースとして光合成速度を予測できるようモデルの改良を加える.あわせて,収穫枝の生育指数とシュート長,乾物重,葉面積などの生育量との関係についての知見を得る. 転流モデルについては,13Cを使ってシンクの量と転流率との関係を検討中であり,取得したサンプルの分析を継続するとともに,得られたデータをモデルに組み込む.なお,このサブモデルについては,統合SDモデルが検証された時点で生じる誤差から再検討する予定である.収穫枝の光合成による炭素獲得モデルと統合することで,収穫枝の総炭素獲得量が算出できると考えている.そのうえで,統合したモデルの検証を行う予定である. 開花日を予測するサブSDモデルを含め,上記のサブSDモデルについて統合を図り,統合SDモデルを稼働させてアーチングバラ群落内での炭素の動きを可視化することで,生産性を低下させている要因の抽出を行い,シミュレーションによるバラの栽培管理の最適化理論を考究する.その過程でバラ生産群落の光合成特性および生理に関する新たな知見の集積を図る.
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Research Products
(1 results)