2019 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌ボルバキアによるRNAウイルス抑制機構の全容解明
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18H02215
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
大手 学 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20386717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ボルバキア / ウイルス / RNA / ヤブカ |
Outline of Annual Research Achievements |
節足動物に広く感染する細胞内共生細菌ボルバキアは、宿主の雌化、雄殺し、細胞質不和合性といった性・生殖撹乱や、RNAウイルスの増殖抑制を引き起こす。我々は、ボルバキアがショウジョウバエ雌の生殖細胞で、母性RNA-タンパク質複合体P bodyの働きを撹乱することを明らかにした。この機構がボルバキアによる多彩な宿主操作の基盤となる可能性について検証を行った。ヤブカ培養細胞におけるP body関連タンパク質の局在と、遺伝子ノックダウンを用いた解析により、デングウイルスの増殖を促進するP body関連RNA結合タンパク質を同定した。ウイルスのRNA鎖特異的なRT-qPCRにより、このRNA結合タンパク質は、デングウイルスの複製を正に制御することがわかった。また、このRNA結合タンパク質がデングウイルスのプラス鎖RNAに結合すること、ボルバキア感染細胞ではこの結合が阻害されていることを明らかにした。 我々はこれまで、ボルバキアの周囲にショウジョウバエの生殖細胞誘導に関与するmRNAが局在し、ボルバキアによって翻訳が制御されていることを明らかにした。ウイルスRNAもボルバキアによって制御されていると考えられることから、宿主細胞内の分布を詳細に調べたところ、ウイルスのプラス鎖RNAがボルバキアの周囲に局在することがわかった。 以上の結果から、ボルバキアは周囲に局在するウイルスRNAと宿主タンパク質の相互作用を阻害することにより、ウイルス複製を抑制している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボルバキアによるRNAウイルス抑制に関与する宿主因子を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
ボルバキアによるRNAウイルス抑制に関与すると思われる主要な宿主RNA結合タンパク質を同定した。このタンパク質の標的RNA配列は、デングウイルス、ジカウイルス等のボルバキアによって抑制されるウイルスに存在している。また、ボルバキアの標的の宿主生殖細胞のmRNAにも存在する。標的配列の改変がボルバキアに与える影響を調べることにより、この標的配列とボルバキアの相互作用が、ボルバキアによって引き起こされる多様な現象の基盤となっている可能性を検証する。
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Research Products
(2 results)