2018 Fiscal Year Annual Research Report

Exploring the effects of microplastics drifting in the ocean on living organisms through multi-omics analyses of mussels

Research Project

Project/Area Number	18H02261
Research Institution	The University of Tokyo
Principal Investigator	井上広滋東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (60323630)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	小島茂明東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20242175) 新里宙也東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70524726) 水川薫子東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50636868)
Project Period (FY)	2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords	ムラサキイガイ / 海洋汚染 / トランスクリプトーム / メタボローム / マイクロプラスチック / イガイ類
Outline of Annual Research Achievements	海水中のマイクロプラスチックが、海洋生物に取り込まれた際に生物に与える生理的影響の詳細はこれまで十分にはわかっていない。本研究は、マイクロプラスチックを取り込みやすい特性を持ち、沿岸生態系の構成者としても、食用水産物としても重要なムラサキイガイ（ムール貝）に、マイクロプラスチックのモデルとして微小プラスチックビーズ、および同ビーズに有機汚染物室を吸着させたものを投与し、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、および行動や心拍の変化の測定を行い、生理学的影響を明らかにすることを目的としている。また、顕著な応答をする遺伝子や生体物質を同定して、汚染マーカーとしての利用を検討する。本年度は、ムラサキイガイを水槽に固定し、蛍光プラスチックビーズ（ポリスチレン等）を取り込ませ、貝の下で糞を受けて回収し、糞中のビーズを蛍光顕微鏡で経時的にカウントして、体内保持時間と、蓄積部位を明らかにする実験系を確立した。次に、その実験系を利用して直径1, 10, 90μmのポリスチレンビーズを実際に与え、体内保持時間を調べたところ、粒子が大きいほど排出に時間がかかることが明らかになった。また、大きい粒子は排出に時間がかかるが、体内への残留は認められないのに対し、小さい粒子は、大多数が素早く排出されるものの、ごく少数の粒子は長期間体内に留まることがわかった。この結果を論文投稿した。さらに、上記で求めた体内保持時間を参考に、より体内残留時間が長いと考えられる直径110μmのポリエチレン粒子、および同粒子にPCBを吸着させたものを調製し、ムラサキイガイへの投与実験を行った。曝露後、ビーズとの接触の多い鰓（えら）、ビーズが通る消化腺、生殖組織および外套膜についてRNAの抽出を行い、配列の解読を実施した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason ムラサキイガイへの蛍光標識マイクロプラスチックビーズ投与と、その糞を回収して排出状況を調べる効果的な実験系を確立することができた。その実験系を用いることにより、マイクロプラスチックの体内残留時間が粒子のサイズによって大きく異なることを発見し、論文投稿することができた。しかし、得られた結果をもとに、ムラサキイガイにPCB吸着ビーズを投与し、PCBのムラサキイガイ組織への移行を化学分析により確認したところ、予想よりも移行量が少なかった。そこで、再度吸着量を増やしたビーズを作成するとともに、投与を複数回に増やして、確実にPCBの移行が起こるように再実験を行う必要が生じた。そのため、期間延長申請を行ったが、延長期間内に貝の組織の採取と、RNA配列解読を実施し、予定していた内容を完遂することができた。再実験の方法を検討する上では、最初の段階で得た粒子の体内保持時間の詳細なデータが大いに役立ち、時間のロスを最小限にとどめることができた。
Strategy for Future Research Activity	まず、解読したRNA配列の解析を行い、マイクロプラスチック投与群、PCB吸着マイクロプラスチック投与群、対照群の間に発現遺伝子の違いがあるかどうかを検討する。違いがあった場合には、メタボローム解析を開始する。どの曝露時間で採取した、どの組織をメタボローム解析に供するかは、トランスクリプトーム解析の結果から判断し、絞り込む予定である。研究期間中にムラサキイガイのゲノムデータが公開された場合には、そのデータも利用しながら、よりトランスクリプトームデータの解析精度の向上を図る。