2019 Fiscal Year Annual Research Report
The economic analysis of agricultural direct payment schemes in Japan and China
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18H02284
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 順一 京都大学, 農学研究科, 教授 (80356302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 慎一 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20434839)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 直接支払制度 / 経営効率 / インパクト評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業分野における価格政策から所得・経営政策への移行は世界的な趨勢であり,消費者負担型から納税者負担型への政策転換と言いかえることができる。市場歪曲的な施策に制限を加えた国際規律(WTO農業合意)に沿ったものだが,EU農業を対象とした多くの実証分析は,直接支払いへの依存度が高い経営体ほど,経営効率が低いことを示している。また日本の直接支払制度を論じた先行研究は,農業経営の助成金に対する依存度が過度に高まることに警鐘を鳴らしている。経営存続の可能性が政府からの財政的な支援に規定され,それが長期化すると,農業者の経営マインドに悪影響が及ぶというのである。 そこで本年度は,日本の農業分野で導入が進む直接支払制度(経営所得安定対策等)に注目し,その経営成果に及ぼす影響に実証的な光を当てた。具体的には,政府の公表統計を利用して,直接支払いが農業の生産性・効率性に及ぼす影響を,フロンティア生産関数の推計を通して明らかにした。 直接支払交付金が経営成果に及ぼす影響は,学術研究のテーマであると同時に,政策の妥当性を問う上で重要な判断材料を提供する。価格支持に比べ直接支払いが,国民負担の観点から透明性の高い政策であり,かつ安定的な営農活動に寄与することは認めるとしても,それが農業経営の生産性や効率性の向上に資するか否かは,にわかに判断できないからである。 計量分析の結果は,直接支払いへの依存度が高い経営体ほど,BC(生物・化学)・M(機械化)過程の技術効率性が低いことを意味しており,コルナイ(J. Kornai)が指摘したソフトな予算制約に基づく非効率性の悪化を示唆している。BC過程に関する技術効率性の序列は,高い方から個別経営5ha未満,個別経営5ha以上,集落営農,組織法人経営の順であった。一方,M過程の序列は,集落営農,組織法人経営,個別経営5ha以上,個別経営5ha未満であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国での現地調査を担う協力機関を変更したため,データの収集にやや遅れが生じている。しかし,調査票を用いてのプリ・テストを実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はプリ・テストの結果を精査して,調査票の最終版を確定させる。できるだけ早い段階で,協力機関に現地調査の実施を要請する。データを回収した後,それを用いて計量分析を実施する。
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Research Products
(5 results)