2018 Fiscal Year Annual Research Report
Climate change impact on world and regional food security
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18H02317
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
古家 淳 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 社会科学領域, 領域長 (60399368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯泉 仁之直 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主任研究員 (60616613)
小泉 達治 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (80415637)
澤内 大輔 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90550450)
松下 秀介 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50355468)
中谷 朋昭 横浜市立大学, データサイエンス学部, 教授 (60280864)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 気候変動 / フードセキュリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
機構的な全球作物モデルCYGMA(Crop Yield Growth Model with Assumptions on climate and socioeconomics)を用いて、将来の世界の収量予測シミュレーションを実施した。対象とする作物は、コメ、小麦、トウモロコシ、大豆である。考慮したシナリオは、4つの排出シナリオ(RCP)、5つの気候変動予測(GCM)、5つの社会経済シナリオ(SSP)、2つの簡易な気候変動対応技術(agronomic adjustment。播種日の移動と品種の切り替え)からなる、200通り(4×5×5×2)である。 これまでの世界食料モデル(WFM17)は、10品目のみが対象となる財であったが、植物油や畜産物を含む20品目に対象財数を拡大したモデル(WFM18)を開発し、より正確な栄養分析が可能となった。また、気候変動が、飼料生産に及ぼす影響を通じて、畜産物需給に及ぼす影響の評価も可能となった。 地域モデルの開発に関して、気候変動の影響予測が可能な、インディカ米とジャポニカ米別の分析が可能なコメの世界モデルを開発した。また、ブラジルの大豆の需給モデルを開発し、新品種導入による州別の収量と作付面積の変化が、大豆油と大豆粕、バイオディーゼル生産に与える影響の分析を行った。さらに、アジア諸国の食料自給率変化の要因分析を行い、インドネシアについては、気候変動が最適な作付面積割合に及ぼす影響を分析するために、家計個票のデータを取得した。 気候変数の時系列分析に関して、気候データ、特に北半球の気温の定常性に関する論文サーベイを行い、気温が非定常であり、その期待値や分散が時間変化に従って変化しているとの結果を先行研究の多くが得ていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全球作物モデルによる収量予測シミュレーションは順調に進捗している。国際応用システム分析研究所(IIASA)のSSPデータベースより国別・10年平均値のGDP、人口シナリオ(2010-2100年)をSSP4とSSP5について入手し、年別値に補完し、CYGMAへの入力データとして新たに整備した。 世界食料モデルについては、各年において、作物の収量関数の修正、対象国数および対象品目数の増加を行い、現実的なシミュレーションを実施できるように改良を重ねてきた。今年度においては、さらに対象品目数を増加させると共に、均衡価格を得るための収束計算部分を改良し、より正確な結果を得ることができた。 地域モデルの開発に関して、州や県別の分析が可能となるようにデータの収集を継続し、また、品目あるいは種類別の分析が可能となるように関数を計測し、モデルを拡充した。 時系列分析に関して、研究協力者とともに、Climate Change、Ecological Economics等を始めとする学術雑誌のサーベイを行い、気象学・水文学等の分野における非定常気候時系列データの取扱いに関する歴史と現状の整理を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
収量予測シミュレーションに関して、RCPやSSPのシナリオやGCMの違いで考慮した不確実性要因(排出シナリオなど)の全球平均収量への寄与度を評価し、必要に応じてシナリオを追加する。 世界食料モデル分析に関して、収量予測値を挿入し、誤差を検定できるように、既存の2004年から2013年までの発射台データに加えて、価格データが得られる初年の1991年から2003年までの発射台データを構築した。それらを用いてモデルの妥当性を検証する。 食料需給モデルにより推計される一部の農畜産物由来の栄養供給量の位置付けの明確化のため、農畜産・水産物由来の栄養供給量をより網羅的に把握する。このため、世界全体の国別の農畜産・水産物供給量及び品目別の栄養価のデータを基に、1人当たりの栄養供給量の中長期的なトレンドを計測する。 時系列分析に関して、サーベイ結果を陸域・海域・全球/半球レベルなどの領域について類型化し、それぞれでどのような観測データが定常/非定常であるとされてきたのかの整理を行うとともに、農業生産に関連する非定常気候時系列データの分析方法について検討する。また、主として日本の研究機関が観測し、公開している膨大な気候時系列データの一部を利用して、非定常性の分析を実施する。
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Research Products
(14 results)