2018 Fiscal Year Annual Research Report
リラキシンとその関連因子の受精を取り巻くネットワークシステムの存在とその機能解明
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18H02327
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高坂 哲也 静岡大学, 農学部, 教授 (10186611)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RLN / INSL3 / 受容体RXFP1 / 受容体RXFP2 / 分子間相互作用 / 精子受精能 / 接着・融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 卵管液中RLNまたはINSL3の検出・由来と配偶子における受容体分子の同定: RLNとINSL3は卵巣の卵胞膜細胞で産生され、卵胞液に貯留され、排卵時に卵管膨大部に放出される分泌の行方がわかった。次に、精子において受容体RXFP1とRXFP2はいずれも複数のバンドとして検出されたが、どちらも85 kDaのバンドのみがリガンドと結合できる機能的受容体で、RXFP1は精子の先体と中片部で、RXFP2は赤道部で同定された。さらに、精子細胞膜に対してRLNはINSL3と比べて高い親和性で結合することが判明した。
2. 卵管膨大部の内分泌環境を模倣した培養系における精子の受精能および運動能に及ぼすRLNまたはINSL3の影響: 卵管液中のRLNとINSL3に加え、P4とE2の濃度をTR-FIAで測定し、発情期の卵管膨大部の内分泌環境を模倣した培養系を確立し、RLNまたはINSL3の暴露処理を行った。その結果、RLNのみ精子細胞内コレステロール放出を誘起して、細胞内cAMPの著しい上昇とPTKの活性化を導くことがわかった。さらに、RLNは精子受精能獲得や運動能を刺激したが、INSL3はそれらに影響を及ぼさないことがわかった。
3. 精子と卵子の接着・融合に及ぼすRLNまたはINSL3の影響: 接着分子であるE-カドヘリンに注目してその発現を調べると共に、体外受精による評価も行った。その結果、E-カドヘリンの変動はINSL3で顕著で、INSL3はE-カドヘリン発現量を増加させることが判明した。興味深いことに、INSL3は受精能獲得時に見られるp40(40 kDaのタンパク質)のチロシンリン酸化を刺激していた。これらのことより、RLNは精子の受精能獲得を積極的に誘起して受精に、一方、INSL3は接着分の発現を刺激して卵との接着・融合に関与する役割分担が究明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、研究実施計画に挙げた実験を全て完了しており、次年度への繰越実験は無いことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、交配時または人工授精時に子宮内で誘起される生理的炎症反応に着目し、RLNまたはINSL3がそれを調節する鍵分子としての可能性を究明予定である。当初計画に沿って概ね順調に遂行しているので、今後も全力で本研究課題に取組む所存である。
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Research Products
(6 results)