2019 Fiscal Year Annual Research Report
リラキシンとその関連因子の受精を取り巻くネットワークシステムの存在とその機能解明
Project/Area Number |
18H02327
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高坂 哲也 静岡大学, 農学部, 教授 (10186611)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | RLN / 受容体RXFP1 / Testis / Uterus / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.交尾後のブタ子宮の生理学的炎症反応とサイトカインの動態:発情期に正常な雄豚と交配させ、経時的に子宮を採取した。子宮内腔の塗抹標本を作製し、炎症反応の指標となる白血球の動態を調べた結果、交尾後5時間で白血球の浸潤がピークとなり、27時間には減少していた。次に、代表的な炎症および抗炎症性サイトカインを調べたところ、炎症性サイトカインのGM-CSF、 IL-6、TNF-αの発現が主に子宮上皮で検出され、その消長は炎症反応の進行と一致し、一方、抗炎症性サイトカインTGF-βは相反する動態を示した。他方、リラキシン(RLN)の受容体RXFP1は炎症性サイトカインと同様の発現動態を示した。
2.RLN欠失動物の作出とそれを用いたブタ交尾後子宮の生理的炎症反応に及ぼすRLNの影響: RLN産生源である精嚢腺を摘出してRLN欠失雄豚を作出し、雌豚と交配させ、交尾後5時間に子宮を採取、RNA次世代シーケンシング (RNA-Seq)による網羅的解析を行った。対象区と比べ、アンギオテンシン受容体AGTR2、抗アポトーシスBCL2、炎症性サイトカインIL、プロスタグランジン合成酵素PTGS2、T細胞マーカーPTPRC、TGF-βの情報伝達分子SMAD2などの遺伝子が発現上昇し、一方、白血球コロニー刺激因子CSF3、マクロファージ炎症タンパク質CCL3、ケモカインCXCL12などの遺伝子発現が著しく低下することを突き止めた。
3.ブタ子宮上皮培養系を用いた検証:2の結果から、白血球コロニー刺激因子CSF3遺伝子の発現がRLN欠失で著しく低下することが示唆された。この遺伝子が産生するGM-CSFは白血球の走化性や浸潤を引き起こすサイトカインである。この発現がRLN添加で誘導されるかをブタ子宮の単層培養系を用いて検証した結果、GM-CSFは RLNに暴露させた培養上清でのみ検出されることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、研究実施計画に挙げた実験をすべて完了しており、次年度への繰り越し実験はないことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、卵母細胞(卵子)または卵胞壁における受容体を介した卵成熟および卵胞破裂(排卵)への関与に着目し、RLNまたはINSL3の作用機構を究明する予定である。新コロナの感染拡大阻止の影響でスタートは大幅に遅れているが、全力で本研究課題に取り組む所存である。
|
Research Products
(4 results)