2018 Fiscal Year Annual Research Report
母性ヒストンによるゲノムインプリンティングの生理的意義の解明
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18H02359
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
井上 梓 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (60814910)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / インプリンティング / 胎盤 / ポリコーム |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムインプリンティングは、胎盤を有する哺乳類において片アレル性の遺伝子発現を制御し、その破綻は発生・成育異常を引き起こす。これまでインプリンティングは配偶子由来のDNA メチル化で制御されると考えられていたが、一部の父性発現インプリント遺伝子は、配偶子の DNAメチル化非依存的に、卵子由来のヒストン修飾H3K27me3により制御されることを近年我々は見出した。このヒストン型のインプリンティングは、着床後の胚体組織では失われる一方で、胎盤でのみ維持されていた。これまでにGab1, Jade1/Phf17, Sfmbt2, Smoc1, Slc38a4, Xistの6個の父性発現遺伝子をヒストン型インプリンティング遺伝子として同定している。次に解明すべき疑問の一つは、これらの遺伝子が胎盤において片アレル性発現する生理的意義は何か、という点である。我々は、この疑問に答えるために、ヒストン型インプリンティングの破綻マウスモデルを作成した。具体的には、H3K27me3修飾酵素のEedを卵子特異的にノックアウトすることで、DNAメチル化型インプリンティングには影響を与えずに、ヒストン型インプリンティングのみ破綻させた胚を作成した。この胚は、胚盤胞期までの着床前発生は完了したが、着床数の減少・E6.5日時点での発生遅延・雄に偏った部分致死性が認められた。現在、これらの表現型に寄与するヒストン型インプリント遺伝子の同定を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒストン型インプリンティングの破綻マウスモデルの確立、ヘテロ型変異による機能回復モデルマウスの作製、及び、ゲノム領域特異的なエピゲノム操作法の検討を進めた。概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
受精後、胎盤発生を通じて片アレル性遺伝子発現を維持するヒストン型インプリンティング遺伝子として、Gab1, Jade1/Phf17, Sfmbt2, Smoc1, Slc38a4, Xistの6個をこれまでに同定している。おそらくこの中に、そのインプリント破綻(両アレル性発現)が上述の表現型を引き起こす遺伝子があると考え、以下の2つのアプローチで検証する。 1. 母性H3K27me3を除去することでインプリント破綻を引き起こせることから、エピゲノム編集技術を用いてそれぞれの遺伝子のプロモーター領域のH3K27me3を除去する。これにより、上述の表現型が生じる遺伝子を同定する。 2. Eed母性欠損胚において、各種のインプリンティング遺伝子にヘテロ型変異を導入することで表現型が回復する遺伝子を同定する。
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Research Products
(13 results)