2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H02370
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
三嶋 雄一郎 京都産業大学, 生命科学部, 准教授 (00557069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 利文 東北大学, 薬学研究科, 教授 (40242812)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コドン / tRNA / ゼブラフィッシュ / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、61種類のコドンによって指定されている。本研究では、ゼブラフィッシュ胚をモデルとして、コドンによるmRNA安定性制御の普遍性と時空間的な可変性を検証することにより、コドンによる遺伝子発現制御のダイナミズムを個体レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、ゼブラフィッシュ初期胚においてゲノムの決まった位置にレポーターを導入してコドン効果を解析するため、前年度までに作成したPhiC31組換え配列系統においてその挿入位置の決定を行った。しかし、調べた複数の系統において、PhiC31組換え配列が遺伝子内領域に挿入されていたことが判明した。そのため、PhiC31組換え配列の挿入系統の作成を再度行い、4番染色体の遺伝子間領域にPhiC31組換え配列が挿入された系統を樹立することができた。 発生過程において変動する可能性があるtRNAの修飾としてキューオシン修飾に着目し、キューオシン修飾酵素をコードするqtrt1遺伝子のゼブラフィッシュ変異体系統をゲノム編集により樹立した。qtrt1変異体はホモでやや致死率の上昇と成長遅延が見られたが、性成熟した成魚に達することができることが明らかとなった。また、分担者の稲田らの研究から、リボソームユビキチン化酵素である出芽酵母Not4がコドンによる遺伝子発現制御に関わることが示唆されたため、脊椎動物ホモログであるCnot4遺伝子のゼブラフィッシュ変異体系統を優先して進め、2つ存在するcnot4遺伝子(cnot4aおよびcnot4b)の変異系統を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、研究代表者が開発した61センスコドンがmRNAの安定性に及ぼす影響を一括して定量できる実験系を応用し、細胞分化が進んだ後期胚において、コドンがmRNAの安定性に及ぼす影響を検証することを目的としている。本年度は、コドンの効果を定量するレポーターを導入するためのDNA組換え酵素PhiC31インテグラーゼの標的配列が、ゲノムのどこに挿入されたか確認を行ったが、予想に反して準備した系統すべてが内在遺伝子座の内部にインテグラーゼの標的配列を有していた。そのため、系統の作成からやり直すこととなった。この問題には、研究費の繰越申請を行い研究期間を延長することで対応し、無事に理想的な挿入箇所を持つ系統が樹立できている。 コドンがmRNAの安定性に及ぼす際に関係すると予想される遺伝子の変異体系統(znf598、qtrt1、cnot4など)は順調に樹立が進み、いくつかは機能欠損の確認や表現型の解析まで進んでおり、各変異体の系統でコドンの効果がどのように変化するのかを解析できる状況に近づいている。予備的にmRNAインジェクションによる受精直後のコドン効果の測定準備を進めており、znf598変異体に関してはRNA-seqのデータの取得が完了している。 計画の中心を占めるレポーター系の準備に問題が生じ、その対応を余儀なくされたため、計画全体としてはやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コドンレポーターが予想通りPhiC31依存的にゲノムの標的部位に組み込まれるかの確認を行い、全てのコドンの効果を解析するための系統作成に取り掛かる予定である。もし技術的に問題が生じた場合は、レポーター遺伝子のゲノムへの挿入以外にも、mRNAの直接注入によって後期胚におけるコドンの効果を定量に挑戦することを視野に入れて研究を進める。tRNA修飾の変動に関しては、キューオシン修飾に解析対象を絞り、発生時期における修飾の変動や、qtrt1変異体における修飾の消失を生化学的に確認する。共同研究により質量分析によって修飾を評価することも検討する。さらにキューオシン修飾により翻訳効率が変化することが知られているコドン(Asn、His,, Tyr, Asp)について、そのmRNAの安定性に与える効果が実際に変化しているかを実験的に確認することで、tRNA変動によってコドン効果が変化するという仮説の検証を行う予定である。 コドン効果に関係することが予想される候補遺伝子の変異体系統に関しては、順次レポーターによるコドン効果の検証を行っていく。同時に、表現型の解析や内在mRNAの安定性解析(RNA-seqを予定)を行うことで、実際にこれらの遺伝子がコドンによるmRNA安定性制御にどのように影響を与え、その破綻がどのような異常を引き起こすのかの全体像の解明を目指す。
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