2019 Fiscal Year Annual Research Report
胸腺T細胞における正負の選択を決定する情報伝達回路の情報理論を用いた同定
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18H02431
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宇田 新介 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (20599609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幡野 敦 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30755533)
比嘉 綱己 九州大学, 生体防御医学研究所, 学術研究員 (60826238)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / システム生物学 / 胸腺T細胞 / 情報理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
FACSを用いて,マウスにおける胸腺T細胞のシグナル伝達データを得た.胸腺T細胞を刺激し,t=0(刺激直後),1, 2.5, 5, 10, 20(分)の各時刻で,全7分子種CD3e, pAKT, pPlcg, pERK, pmTOR, pZAP70, pS6に対して,CD3eは相対量,CD3e以外は相対的リン酸化強度を測定した.CD3eは他の分子種の上流に相当し,入力とみなすことができる.ひとつの条件で10000個程度の細胞数を測定できるが,分子種によってはFACSの測定の始めの段階で測定値にアーチファクトが発生することがわかったため,分子種間の相互情報量の値が安定するようにデータ処理を行う条件を検討した.その結果,FACS測定の後半約6000個の細胞数のみをデータ解析に用いることでアーチファクトの影響を取り除けることがわかった. シグナル伝達データを解析したところ,各分子種の平均時系列は比較的似通っていた.しかし,各分子種間の相互情報量を評価した結果,pS6は他の分子種との相互情報量が他の分子種間の相互情報量と比べて20分において上昇するという特徴がみられた. シグナル伝達経路における情報伝達の経路の違いを調べるため,各時刻における通信路に相当する条件付き分布間の距離を定義し,t-SNEを応用することで,入力となるCD3eから他の分子種への各時刻での情報伝達の経路の違いを2次元マップに埋め込んで可視化した.その結果,pS6はt=20分だけでなく,全時刻において情報伝達が他の分子種と異なるような経路であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始の初年度に発生した実験マウスの供給の遅れについては,分担研究者の追加によって解消され,今年度途中まではデータ取得および解析が順調に進んでいた.しかし,新型コロナウイルスの影響により,分担研究者の出張が段階的に自粛から禁止になる措置がなされ,3月には九州大学にて行う必要のある実験が全くできなくなった.これにより,1,2か月程度の遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
FACS測定で取得した現在のシグナル伝達データから,実験,および,解析の条件をさらに最適化し,より最適な条件でデータを取得する.一度に測定できる分子種は7分子種が限界であるが,実験を分けることで測定分子種を増やすことはできる.その場合に問題になるのは,実験をわけることで分子種が結合分布とみなせなくなることであるが,CD3eとERKなどいくつかの重要な分子種を各実験で重ねて測定することで,データ解析の事後処理で結合分布とみなせるような手法の確立を検討する. 今年度に開発したt-SNEによる通信路のマッピング手法を用いて,シグナル伝達における情報伝達が特徴的な通信路を調べる.分子種ごとにいくつかの特徴的な通信路にわけることができれば,それらの分子種ごとに正負の選択に関わる情報をコーディングしていると考えれられる.分子種ごとの通信路の違いを調べることで,正負の選択の情報伝達の仕組みを明らかにすることにつなげたい. 現段階では,新型コロナウイルスの影響によって実験が滞っていることが最大の懸念である.出張だけでなく施設の利用にも通常時と比べて制限がかかっている.制限が解かれ次第,速やかに研究を進めたい.
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[Journal Article] Trans-omics Impact of Thymoproteasome in Cortical Thymic Epithelial Cells2019
Author(s)
Ohigashi Izumi、Tanaka Yu、Kondo Kenta、Fujimori Sayumi、Kondo Hiroyuki、Palin Amy C.、Hoffmann Victoria、Kozai Mina、Matsushita Yosuke、Uda Shinsuke、Motosugi Ryo、Hamazaki Jun、Kubota Hiroyuki、Murata Shigeo、Tanaka Keiji、Katagiri Toyomasa、Kosako Hidetaka、Takahama Yousuke
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 29
Pages: 2901~2916.e6
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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