2020 Fiscal Year Annual Research Report
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18H02453
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
井上 直和 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50379096)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 受精 / 精子 / 卵子 / 膜融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
受精のクライマックスである精子と卵子の融合メカニズムは、我々が同定した精子側のIZUMO1 (Inoue N et al., Nature 2005) と、そのレセプターである卵子側のJUNOの発見 (Bianchi E et al., Nature 2014)、さらにそれら複合体の細密立体構造の決定 (Ohto U et al., Nature 2016) により、一応の決着が付いたように思えた。しかしIZUMO1のセカンドレセプターを示唆するデータ (Inoue N et al., Nat Commun 2015) や、IZUMO1-JUNO制御系とは異なる卵子のCD9、精子のSPACA6ノックアウト配偶子が融合不全であることから、配偶子融合には、一瞬の反応のために複数のステップで、より確実で精巧な分子メカニズムが存在すると考えられる。 昨年度、我々は本研究の解析過程で、卵子側の融合因子CD9がJUNOなどのGPIアンカー型タンパク質を、染色体近傍にある卵子表層の皮質アクチンキャップに配置しないようにする「分子区画化」に積極的に関与していることを明らかにした。つまり正常な状態では、皮質アクチンキャップに存在しないはずの受精に関わる因子群が、CD9欠損卵子ではそこに漏れ出し、正しい区画化が行われない異常な状態に陥る。その結果、精子が染色体付近に侵入するリスクが増大する (Inoue, N et al., Development 2020)。この研究結果から、CD9によって制御されるタンパク質、例えばJUNOの卵子上の局在を調べることで女性不妊症の診断基準として有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題によって推進された研究成果が、2020年に査読付き国際学術論文に掲載された (Inoue, N et al., Development 2020)。次年度も研究成果を積極的に国際サイエンスコミュニティーや国民に向けて発信するとともに、研究計画に沿って世界初の新発見を成し遂げるように尽力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は順調に進展しているため、特段の計画変更はない。次年度は、特に第二のIZUMO1レセプターやSPACA6レセプターの同定とそれらの精密立体構造解析に注力する。さらに、精子のSPACA6、卵子のCD9やJUNOなどの配偶子融合因子の蛍光タンパク質ラベル遺伝子改変マウスを用いた、生細胞イメージングをベースとした生理的解析を行い、同定された新規融合因子との関連性を解明したい。
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Research Products
(3 results)