2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the mechanism of strigolactone signal transduction in a parasitic plant Striga
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18H02459
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土屋 雄一朗 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (00442989)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 寄生植物 / ストリゴラクトン / 植物ホルモン / 受容体 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生植物は、植物形態の基本的な枠組みを逸脱することなく、従属栄養として生きる能力を独特に進化させた高等植物である。本研究では、アフリカの穀物生産に深刻な被害を及ぼす寄生植物ストライガ(Striga hermonthica)を研究材料に、宿主因子であるストリゴラクトン(SL)の応答に関わる新たな因子の同定を行う。これまでの研究にて、11個のファミリーからなるSL受容体の同定し(Tsuchiya et al., Science, 2015)、その結晶構造の解明にも成功した(Toh et al., Science, 2015)。さらに、受容体活性をin vivoで可視化する蛍光性分子・ヨシムラクトンの創出より、ストライガの根の先端から波のように起こる受容ダイナミクスを観察することが可能となった。これら研究成果は、受容体の進化という観点から、植物の寄生能力の理解を大きく進めたものである一方、その分子機構は不明な点が多い。寄生植物に特有な機構、すなわち、多数のSL受容体が関わるシグナル伝達がどのように統合され、受容ダイナミクスがどのように形成され、それが発芽の意思決定にどう結びつくのか。これらを理解することで、初めてこの寄生能力の全体像を理解することが可能となる。そのためには、受容体と協調して働く新たな遺伝的コンポーネントの同定が必須である。そこで本研究では、独自に整備した情報と低分子ツールを活用し、ストライガにおけるSLシグナル伝達に関わる新たな因子の同定を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遺伝学スクリーニングを行えないストライガでこの目的を達成するため、種を選ばずに解析できるケミカルジェネティクスに着目し、まずはSL応答を抑圧する化合物をケミカルスクリーニングより同定した。ストライガのストリゴラクトン受容体のうち、ShHTL7とShHTL11を選択的に活性化するアゴニストであるSPL7とT-010の作用を抑圧する化合物をそれぞれ12,000の人工化合物ライブラリーよりスクリーニングした結果、100を越える多様な構造の新奇化合物の同定に成功した。興味深いことに、これらの化合物の中には、ShHTL2やShHTL6といったSL受容体に選択的に結合するものが含まれていたことから、発見した発芽阻害剤は受容体を部分的に活性化するパーシャルアゴニストであり、「受容体による受容体機能の制御」という新たな制御機構が想定さた。すなわち、ストライガではなぜ受容体の数が増加したのかという疑問の解決の糸口を掴んだと考えられた。当初の計画では、新奇化合物の標的タンパク質を研究期間全体で生化学的に同定する予定であったが、予定より大幅に早く標的タンパク質の候補へとたどり着けた点で当初の計画より進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
では、発芽を促すアゴニストと発芽を阻害するパーシャルアゴニストを分ける分子メカニズムとはどのようなものだろうか。これを解明するため、今年度は生化学的なアプローチ、シロイヌナズナのヘテロ発現系を用いる遺伝学アプローチ、および構造生物学的アプローチを進める。生化学的アプローチでは、受容体と受容体、あるいは受容体とそのパートナーとなるF-boxタンパク質などのシグナル伝達因子とのタンパク質ータンパク質相互作用に及ぼす作用をアゴニストとパーシャルアゴニストで比較解析する。シロイヌナズナを用いた解析では、例えばShHTL7-GFP融合タンパク質とShHTL2などストライガのSL受容体二つを共発現させ、ShHTL2選択的パーシャルアゴニストを与えることでShHTL7タンパク質の安定性や細胞内局在にどのような影響を与えるか、また発芽誘導作用にどう影響するかを観察する。構造生物学的アプローチでは、トロント大学Shelley Lumba博士との共同研究より、パーシャルアゴニストと受容体の共結晶構造の解析を試みる。これら情報を統合し、原子レベル、タンパク質レベル、細胞レベル、発芽の表現系レベルでのパーシャルアゴニストの作用機構を明らかとする。
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