2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞の内と外を結ぶ物質輸送システムはいかに獲得されたか
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18H02470
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
上田 貴志 基礎生物学研究所, 細胞動態研究部門, 教授 (10311333)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞膜 / 分泌 / エンドサイトーシス / ANTH / RAB / シロイヌナズナ / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜は、細胞内と細胞外という二つの異なる環境のインターフェイスとして機能しており、細胞間の情報伝達や細胞外環境の受容において極めて重要な役割を担う。また、植物に特徴的な細胞構造である細胞壁の構築や機能発現においても、細胞膜が重要なはたらきを担っており、植物の組織形成や環境応答など、階層の異なる様々な生命現象に細胞膜機能が深く関わっている。これらの機能を果たすため、細胞膜上のタンパク質の量や局在は厳密に制御される必要がある。細胞膜のタンパク質組成は、タンパク質ごとに厳密に制御された分泌経路とエンドサイトーシスのバランスにより決定されると考えられるが、その分子機構には未知な点が多く残されている。本研究課題では、陸上植物の進化に沿った分泌経路とエンドサイトーシス経路の多様化の過程を再構成するとともに、その詳細な分子機構を解明し、形質の進化との関連を明らかにすることを目的に研究を進めている。分泌およびエンドサイトーシス経路で機能する分子の中から、陸上植物の進化の過程で特徴的な多様化を果たしているRAB GTPaseや、クラスリンアダプタータンパク質の一種であるANTHドメインタンパク質、繋留因子複合体等に注目し、ゼニゴケとシロイヌナズナを用いた比較解析を展開している。これまでにシロイヌナズナのANTHドメインタンパク質の一グループであるPICALM5についてまとまった進展があったほか、他のPICALMメンバーやゼニゴケのANTHドメインタンパク質の単離と基礎的解析が進行中である。また、ゼニゴケのRAB GTPaseの網羅的解析を通じて分泌経路で機能するRAB11やRAB8の局在解析や発現解析もおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナゲノムには、ANTHドメインタンパク質であるPICALMメンバーが18個コードされている。予備的な解析において、この中のPICALM5が花粉管の持続的な伸長に必要であることを突き止めており、今年度の研究でPICALM5の機能解明をさらに推進した。PICALM5がクラスリンと花粉管の亜頂端部の細胞膜上で共局在することを示すとともに、picalm5変異体の花粉管が伸長の途中で破裂してしまうこと、この表現形は蛍光タンパク質を融合したPICALM5の発現により相補されること、花粉管の頑健性の維持に必要なANXUR受容体キナーゼの花粉管頂端部への局在がpicalm5変異体で見られなくなることを突き止めた。さらに、picalm5変異体では花粉管の誘引に関わるPRK6受容体キナーゼの局在は正常であることが分かった。これらのことから、PICALM5は花粉管亜頂端部からのANXURのリサイクリングに特異的に関わるクラスリンアダプターであることが明らかになった。この成果を、原著論文として公表した(Muro et al., 2018)。 シロイヌナズナのRAB8とRAB11について、その細胞内動態の詳細な解析もおこなった。GFPとRFPでそれぞれ標識したRAB8とRAB11を発現する形質転換体を作製し、全反射顕微鏡で細胞膜近傍を観察したところ、RAB8が細胞膜上の静止したドット状構造に局在するのに対し、RAB11は活発に運動する小胞に局在し、この小胞がRAB8が局在する細胞膜上の部位に結合する様子が観察された。 ゼニゴケのRAB8とRAB11についても、全ての遺伝子を単離し、発現パターンと細胞内局在を明らかにし、原著論文として報告した(Minamino et al., 2018)。また、ゼニゴケのPICALM遺伝子について、ゲノム情報をもとに全てのメンバーの遺伝子を単離することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は細胞内動態解析に用いる顕微鏡に不調を来たし、修理が必要となったために一部の実験を次年度に持ち越さざるを得なかったが、2019年度に計画していた実験とあわせ、研究を順調に進めることが出来た。次年度以降においては、シロイヌナズナのPICLAM5以外のPICLAMメンバーの機能解析を進めることで、PICALMファミリー内における機能の多様性についての知見を得る。具体的には、PICALM1グループとPICALM9グループの詳細な機能解析を計画している。細胞内局在の詳細な解析や、変異体の表現形の解析、相互作用因子の単離と機能解析等を計画している。 ゼニゴケのPICALMメンバーについても機能解析を進める。ゼニゴケには3つのPICALMメンバーが存在することを既に明らかにしており、それら全ての遺伝子の単離も完了している。来年度以降に、これらの分子の発現パターンや細胞内局在を調べるとともに、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集により変異体を作出し、その表現形を解析していく。 RAB8とRAB11については、シロイヌナズナで興味深い動態が観察されたことから、RAB11とRAB8が細胞膜近傍でカスケードを形成して機能している可能性を検証する。RAB11とRAB8の相互作用因子を単離し、両者を結びつけるような分子が存在するのかを調べるとともに、そこにEXO70を含むExocyst複合体がどのように関与するのかを解析する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] RAB GTPases in the basal land plant Marchantia polymorpha2018
Author(s)
Minamino, N., Kanazawa, T., Era, A., Ebine, K., Nakano, A. and Ueda, T.
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Journal Title
Plant Cell Phys
Volume: 59
Pages: 850-861
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Distinct sets of tethering complexes, SNARE complexes, and Rab GTPases mediate membrane fusion at the vacuole in Arabidopsis2018
Author(s)
Takemoto, K., Ebine, K., Askani, JC., Krueger, F., Ito, E., Goh, T., Schumacher, K., Nakano, A. and Ueda, T.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci USA
Volume: 115
Pages: E2457-E2466
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Integration of two RAB5 groups during endosomal transport in plants2018
Author(s)
Ito, E., Ebine, K., Choi, S., Uemura, T., Nakano, A. and Ueda, T.
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Journal Title
eLife
Volume: 7
Pages: e34064
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Involvement of S-type anion channels in disease resistance against an oomycete pathogen in Arabidopsis seedling2018
Author(s)
Kurusu, T., Mitsuka, D., Yagi, C., Kitahata, N., Tsutsui, T., Ueda, T., Yamamoto, Y., Negi, J., Iba, K., Betsuyaku, S., Kuchitsu, K.
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Journal Title
Commun. Integr. Biol.
Volume: 11
Pages: 1-6
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Transcriptional switch for programmed cell death in pith parenchyma of sorghum stems2018
Author(s)
Fujimoto, M., Sazuka, T., Oda, Y., Kawahigashi, H., Wu, J., Takanashi, H., Ohnishi, T., Yoneda, J., Ishimori, M., Kajiya-Kanegae, H., Hibara, K., Ishizuna, F., Ebine, K., Ueda, T., Tokunaga, T., Iwata, H., Matsumoto, T., Kasuga, S., Yonemaru, J., and Tsutsumi, N
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci USA
Volume: 115
Pages: E8783-E8792
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] ANTH domain-containing proteins are required for the pollen tube plasma membrane integrity via recycling ANXUR kinases2018
Author(s)
Muro, K., Matsuura-Tokita, K., Tsukamoto, R., Kanaoka, MM., Ebine, K., Higashiyama, T., Nakano, A. and Ueda, T.
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Journal Title
Commun. Biol.
Volume: 1
Pages: 152
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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