2018 Fiscal Year Annual Research Report
深海ベントスの分布と幼生生態:化学合成群集と海溝最深部動物相の進化を探る
Project/Area Number |
18H02494
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 泰則 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20381056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遊佐 陽一 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60355641)
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (70313195)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 深海 / 多様性 / 進化 / 生物地理 / 幼生 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱水・冷湧水や鯨骨・沈木周辺堆積物を含む化学合成動物群集は,近年の深海生物研究の中心的存在である.これら深海化学合成群集の底生動物(ベントス)は,いつ,いかなる環境から,どのように現在の系に進出したのか? また,化学合成系外の深海,特に6,500m以深の超深海において,何がベントスの垂直・水平分布を規定し,種分化はいかにして生ずるのだろうか.本研究では,1)貝類と甲殻類の複数系統を対象に,浅海から海溝最深部まで,化学合成系・非化学合成系の試料を網羅的に採集,個々の種の生息環境と深度分布を詳細に把握し,2)種間系統樹構築と化石記録参照により,各環境・深度への進出ルートと絶対年代を探る.また,3)初期発生様式が,異なる環境・水深・地域間の移動を規定する主因の1つであるとの仮説のもと,個々の種について幼生生態を解明し,成体の時空分布・遺伝的分化の程度と対比,化学合成系と超深海における動物の起源と進化を理解する. 本課題について,これまでに得た成果を10編の論文として公表できた.特に,ミヤコドリ科貝類の進化的放散についての成果をZoological Journal of the Linnean Society誌にて公表したほか,深海熱水化学合成群集の腹足類について新種記載を含めた分類学的検討を進めた.また,千島海溝最深部の腹足類および無板類相について2論文としてProgress in Oceanography誌に公表した.これらは世界最深(>9,500 m)の腹足類・無板類相報告となる.深海性腹足類の上位系統・種内の集団解析についても,それぞれ原著論文として公表した.また,干潟・マングローブ域を含む浅海の還元環境や好気環境に生息する種を採集するため,ニューカレドニアや沖縄県など国内外での野外調査を行ったほか,東北沖での漸深海トロール調査を継続,大きな成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
深海生物のDNAと形態を扱う専門的知識を有する研究協力者を雇用予定であったが諸事情により実現せず,関連の実験を担当する技術補佐員2名を新規雇用するまでに10ヶ月を要した.既存データの論文化ならびに野外調査については予定通り実施できている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の予定通り,分子系統解析と地理的分布・水深分布の検討,形態比較ならびに幼生期を含めた生態に関する検討を継続,原著論文化する.新型コロナウイルス感染症に関する規制のため,北海道沖の漸深海帯を目的とする航海をはじめとした野外調査,また各研究機関での試料検討や打ち合わせのための出張の可否については未だ不透明であるが,安全な実施が可能となった段階で新たに計画を行いたい.
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Research Products
(37 results)