2020 Fiscal Year Annual Research Report
シヌクレイノパチーの分子病態解明とオートファジー活性化による発症前治療法の開発
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18H02533
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
若林 孝一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50240768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹治 邦和 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10271800)
三木 康生 弘前大学, 医学研究科, 助教 (30709142)
森 文秋 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (60200383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シヌクレイノパチー / オートファジー / モデル動物 / レビー小体病 / 多系統萎縮症 |
Outline of Annual Research Achievements |
シヌクレイノパチー(パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症)ではαシヌクレインの異常蓄積を共通病態とする。しかし、その蓄積機序は不明であり、進行を遅延・阻止する治療法は確立されていない。今回、シヌクレイノパチーの病態を知るためにアルツハイマー病における危険因子の1つとして同定されているMyelin associated oligodendrocytic basic protein (MOBP)の局在を検討した。健常者ではMOBPはミエリンに局在していた。一方、パーキンソン病、レビー小体型認知症ではレビー小体がMOBP陽性であった。以上からMOBPがレビー小体病の病態に関わっていることが示唆された。 さらに、異常タンパク質の凝集を抑制する分子の探索を進めた。最近、理化学研究所が開発した「新規タンキラーゼ阻害剤」が従来の阻害剤よりも効率的にTDP-43の凝集を抑制することを見出した。この凝集抑制効果は、TDP-43とタンキラーゼが物理的に結合できないことに起因しており、TDP-43のタンパク質修飾が起こらないことを明らかにした。TDP-43は筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症の標的タンパク質である。さらに、この新規タンキラーゼ阻害剤はTDP-43だけでなく、αシヌクレインの凝集も抑制することを見出した(投稿準備中)。この阻害剤は、ポリ(ADP-リボシル)化酵素(PARP)ファミリーの中でもタンキラーゼに対する選択性がきわめて高く、別のPARPファミリー酵素であるPARP1およびPARP2に対する阻害効果は微弱である。 今後、「新規タンキラーゼ阻害剤」と現在進めている「トレハロースの経鼻・経口投与」の併用により、シヌクレイノパチーの治療法開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、異常タンパク質の凝集を抑制する分子の探索を進め、新規タンキラーゼ阻害剤がTDP-43だけでなく、αシヌクレインの凝集も抑制することを見出した。さらに予備的検討により、多系統萎縮症モデルマウスにトレハロースを経鼻投与すると行動学的に病態が改善することを確認しており、治療法開発に通ずる可能性は高い。以上より、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もシヌクレイノパチーにおける異常タンパク質蓄積機構やオートファジー関連分子が病態に果たす役割について研究を進める。さらに、脳内オートファジーの活性化は治療にもつながることから、経鼻的投与を含め効果的な脳内オートファジーの活性化手法の開発を進める。
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Research Products
(12 results)