Research Project
本研究は、Dectin-1、2領域にマップされる機能不明のC型レクチンの遺伝子欠損マウスを作製し、その生理機能やリガンドを解析すると共に、様々な免疫関連疾患の治療への糸口を見出すことを目的としている。今年度は、C型レクチン及び下流遺伝子改変マウスを用いた解析の成果として、3報の英文原著論文と1報の英文総説を発表した。特に、DECTIN-1の下流で誘導されるIL-17Fが腸内常在クロストリジウム属XIV細菌の増殖を抑制することで腸管制御性T細胞(Treg)の分化を制御し、潰瘍性大腸炎の病態形成に関与していることを明らかにした(Kamiyaら、 Mucosal Immunol., 2018; Tangら, Nat. Immunol., 2018)。一方、マウス皮膚ラングハンス細胞が産生するIL-36αはC型レクチンによって誘導され、Th17関連サイトカインの発現を増強させることによって乾癬性皮膚炎を増悪化することも明らかにした(Hashiguchi ら, J. Immunol., 2018)。また、DECTIN-1欠損マウスで過剰増殖している腸内乳酸菌L. murinusによる炎症性腸疾患改善の作用機序を解析し、死菌体の無菌動物への投与により、Tregの増加が認められたことから、代謝産物以外の菌体成分がTregの増加に関わることが分かった。さらに、DCAR1欠損マウスを用いた解析から増殖中のカンジダ菌体ではDCAR1のリガンドが存在することも分かった。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
上記の様に、研究計画に従い、C型レクチン遺伝子とそれらの下流遺伝子改変マウスを解析することにより、我々の研究が中心となった4報の論文と14報の共著論文を発表する事ができた。特にDECTIN-1下流サイトカインIL-17Fは従来IL-17Aと同じ機能を持つという理解に対し、腸管免疫と腸内細菌への影響においてIL-17Aとは明らかに異なる機能を持つことを明らかにし、C型レクチンの腸管免疫における役割の理解を格段に深めることができた。現在IL-17Fの中和抗体の炎症性腸疾患に対する治療・予防について特許出願中である。今後ともC型レクチンと下流因子をターゲットとして免疫関連疾患制御への応用を探っていく予定である。腫瘍形成におけるC型レクチンの機能解析において、当初予定していたDECTIN-1に加え、DCIR、CLEC1aそしてCLEC12bについて役割の解析を同時進行している。すでにDECTIN-1が腸管の腫瘍形成を促進することが分かっただけではなく、CLEC1aとCLEC12bはそれと正反対に腫瘍形成を阻止することを見出し、抗腫瘍免疫におけるC型レクチンの役割の全体像を明らかにしているところである。当初予定していたCLEC12aの遺伝子欠損マウスの作製は、従来のES細胞遺伝子相同組換え法に加え、最新のゲノム編集技術CRISPR/Cpf1法も用いて作製を進めている。また、DCIRの機能解析に関して、欠損マウスを用いて潰瘍性大腸炎と炎症依存性大腸腫瘍モデルを誘導して従来知られていた自己免疫性関節炎以外の炎症性疾患の病態形成における役割を解析している。さらに、DCIRの発現細胞の同定を行うため、現在DCIR抗体を作製しているところである。このように、遺伝子改変マウスの作製とその解析は順調に進展しており、研究計画は順調に進行している。
以上の解析のうち、1)DCIR発現細胞の局在を解析するツールとして抗体の作製を続け、解析は来年度以降に行う。イメージングの手法を用い、リガンド発現細胞と受容体発現細胞との相互作用を明らかにする。2)CLEC12aの解析については、今年度中に遺伝子欠損マウスを作製完了次第、腫瘍形成への影響を検討する。3)CLEC1aについて、今年度中にはリガンドを同定し、来年度中の論文投稿に持ち込む。4)DCAR1については、現在リガンドの検討を進めており、手掛かりを得ている。今年度以降はCIAやEAE、OVA誘導気道過敏症、イミキモド(IMQ)誘導皮膚炎、DSS誘導大腸炎、などのモデルを用いて感受性を検討する。CLEC1A, DCAR1のリガンドについては、Fc融合蛋白質を合成し、糖鎖アレイを用いてリガンドを探索する。同じ手法を用いてDCIRリガンドの同定に成功しており、成功する見通しが高い。これらの解析により、生体内での役割、その分子メカニズムを明らかにする。 これらの基礎的な解析と並行して、5)腸管免疫に於ける機能と6)腫瘍形成に於ける機能解析を進める。真菌感染や細菌感染、腸内フローラへの影響を詳しく調べる他、これらの微生物上のリガンド分子を探索する。KOの結果腸管炎症に影響が見られる分子については、阻害(促進)抗体や阻害分子による炎症性腸疾患の治療の可能性を検討する。また、腫瘍形成との関連が認められた受容体については、腸管遺伝子発現への影響や、腸内微生物叢への影響、炎症応答への影響などの多面的な解析を行い、当該受容体の関与メカニズムを明らかにする。
All 2019 2018
All Journal Article (18 results) (of which Int'l Joint Research: 7 results, Peer Reviewed: 18 results) Presentation (11 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Invited: 4 results) Patent(Industrial Property Rights) (3 results) (of which Overseas: 1 results)
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