2020 Fiscal Year Annual Research Report
新敗血症定義に準拠した敗血症総合検査システム構築と国内及び東南アジアへ運用展開
Project/Area Number |
18H02728
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北島 勲 富山大学, 大学本部, 理事・副学長 (50214797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 健右 富山大学, 附属病院, 特命講師 (30436795)
柳原 克紀 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40315239)
仁井見 英樹 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (50401865)
山本 善裕 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70452844)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 敗血症 / 迅速起炎菌同定検査 / Tmマッピング法 / 細菌数定量 / ATP活性検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
新敗血症定義に準拠した総合敗血症診断システムを開発し、富山大学附属病院から国内外共同研究展開への基盤構築を目的に本研究が実施されている。具体的な研究実績を以下に示す。1)敗血症血液検体から直接起炎菌を同定できるTmマッピング法の臨床運用を実施した。菌種同定用PCRキットを三井化学株式会社から生産が開始されるようになった。次に富山大学附属病院において敗血症臨床検体より5年間で同定された163菌種を精査しデータベース登録が完了した。令和3年度に富山大学附属病院で検査キットと運用プロトコルの臨床性能試験を実施できる段階である。また、Tmマッピング法は採血量が血液培養法に比べ少量で実施できる利点を活用し、小児用無菌採血管を作成と小児用敗血症Tmマッピング法プロトコルを策定した。埼玉県立こども病院で新生児、乳幼児、小児の敗血症患児に対する臨床研究が開始された。2)敗血症起因菌数定量検査を構築した。。大腸菌DNAを相対内部対照とした細菌DNAコピー数検出法を確立できた。敗血症病初期では、血液中の細菌数が時間単位で急激に増加し、6時間以上遅れてCRP、カルシトニンが上昇し、抗菌薬投与により菌数が減少してもCRP、カルシトニンは高値を持続するデータが得られている。データを蓄積し詳細な解析を進め、敗血症における起炎菌細菌数が病態を把握できる新たなバイオマーカーとなりえるのか検討を進めている。3)細菌中のATP活性定量測定を検査室で実施できるシステムを構築した。多数検体を迅速にハイスループットで血液から細菌ATP活性をルシフェラーゼ発光強度で定量化自動測定装置を開発し、臨床検体を用いた検証を実施中である。好気性細菌の生死と増殖率については、細菌検査検査汎用機器(バクテアラート3Dシリーズ)と一致した高い検知能力があることが判明し、その迅速性と多数検体検出能に有用性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本総合敗血症診断システムの中心となるTmマッピング法は、臨床運用と汎用化に向けて、試薬関連のキット化と生産が開始され、運用プロコルの臨床性能試験を実施する段階になった。埼玉県立こども病院における共同研究が定着し、病院における医師からの緊急検査要請に対応できる体制が整備され敗血症罹患児の治療に貢献できるようになった。治療成果は症例報告として毎年報告され、本研究機関終了時にはその成果が論文にまとめられる計画となっている。海外との共同研究は、コロナ禍で実施が極めて困難な状況が続いているが令和2年9月にチェコスロバキア(プラハ)のUniversity Hospital Montul 小児科学/臨床微生物学 Ondrej Clinek教授からTmマッピング法の問い合わせがあり検査キットを送付して共同研究が始まった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究最終年度となるため、今までの研究進捗状況の総括とともに計画の遅れや障害となってる要因を分析し、予定していた研究課題のアウトカムを明確に設定し、期間内に着実に成果が出せる計画とする。さらに次の研究に発展できる計画を立てる。1)Tmマッピング法の臨床利用とその運用について。本研究の柱となるTmマッピング法の臨床普及のために、当初計画どおり富山大学附属病院で臨床性能試験を実施する。今後、血液培養法との正確性と起炎菌データベース登録データと臨床分離株との照合による精度を検証する。他施設共同研究に関しては、コロナ禍においても確実かつ臨床的有用性を明らかにできる共同研究体制を構築する。そこで埼玉県小児医療センターとの共同研究を重点的に実施する。また、海外展開を進める計画であったがコロナ禍で困難な状況となっている。シンガポール国立大学、チャンギ総合大学と日本国内実施例を参考に情報交換を行い、キットやプロトコルの海外運用の基盤を継続して構築してゆく。2)敗血症起因菌数定量検査の活用について。敗血症発症初期から治療介入における患者状態および経時的血液サンプルより、血液中の細菌数と白血球数、CRP, カルシトニン値、体温、SOFA総スコアと照合し、細菌数が敗血症病態の新たなバイオマーカーとなるのか明らかにする。3)検査室における細菌中のATP活性測定システム構築と臨床応用について。好気性細菌の生死と増殖は正確に判定できるが嫌気性菌の判定が困難であるため、測定方法の変更により検出の問題点の解決を図りより広範囲に起因菌に対応できる検査法に改良する。さらに血小板ATPの影響を排除した血清ATP測定法を開発し、ATPがどのような疾患の病態検査マーカーとなるのか次の研究に発展させる基盤研究を進める。
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Research Products
(15 results)