2019 Fiscal Year Annual Research Report
Significance of cellular signaling pathways in cardiovascular development and disease
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18H02787
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
中川 修 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40283593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (20562333)
浦崎 明宏 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40550083)
瀬谷 大貴 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (30806021)
田中 亨 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (50806065)
劉 孟佳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (50826922)
田村 昌子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (30849261)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 先天性心血管疾患 / 遺伝性血管病 / シグナル伝達 / 内皮細胞 / 心筋細胞 / 遺伝子組換えマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
血管系の発生・形態形成および成熟機能を制御するシグナル伝達の異常は先天性心疾患および遺伝性血管病の原因となり、虚血性疾患や癌に認められるような成体の病的血管新生においても重要である。私たちはこれまでに、ヒト心血管疾患に重要な意義を有するNotchおよびALK1シグナル伝達系の下流ターゲット因子として、Hey1転写因子・Tmem100膜タンパク質・Sgk1リン酸化酵素などを同定し、その発現制御機構や機能メカニズムの研究を行ってきた。これらの遺伝子の欠損マウスは重篤な心血管形成異常を引き起こすことが明らかになり、それらのヒトにおける重要性も注目されている。例えば、Notchシグナル伝達系で働く因子の遺伝子変異は脳小血管病CADASILやAlagille症候群の原因となり、ALK1受容体およびシグナル関連遺伝子の変異は遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT、オスラー病)の原因、肺動脈性肺高血圧症の素因として重要である。今回の研究では、遺伝子組換えマウスモデルと分子生物学的手法を用いて、これら下流ターゲット因子の機能メカニズム・上流発現制御機構・生体における意義を明らかにすることを試みている。NotchおよびALK1シグナルによって発現制御を受ける下流ターゲット因子が血管形成や成熟機能制御において働く分子機構を明らかにすることは、先天性心疾患・難治性血管病の病態生理解明のみならず、遺伝子変異によって生ずるシグナル伝達異常を正常化する新しい治療ストラテジー開発の基盤となると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一年度から第二年度において、Hey1転写因子の欠損による胎生期咽頭弓動脈形成障害とそれに起因する大血管形成異常(大動脈弓離断症、右大動脈弓など)の機序における細胞特異的機能、特に血管内皮細胞・平滑筋細胞における機能の比較を行うため、組織特異的遺伝子欠損マウスを作成した。様々な比較解析の結果、Hey1の血管内皮細胞における機能が咽頭弓動脈形成・大血管形成の異常を防ぐために重要であることが明らかになった。さらにHey1の胎生期血管系における発現を規定するエンハンサーを同定し、その転写調節機構においてNotchシグナル伝達系が重要な働きを有することを明らかにした。また、私たちは小型膜タンパク質であるTmem100の遺伝子欠損によって重篤な血管形成異常が生ずることを報告したが、その分子機能メカニズムに不明な点が多いため、血管内皮細胞特異的かつ誘導型の遺伝子欠損マウス系統を作成し、新生仔もうまく血管形成をはじめとする様々な血管形成現象における観察を行った。さらに、Tmem100の胎生期血管内皮細胞特異的発現に働くエンハンサーを同定し、その活性を制御する上流転写因子の候補を同定した。一方、Sgk1リン酸化酵素についても胎生期血管内皮特異的発現を規定するエンハンサーの同定を試み、遺伝子の近位および遠位に存在する複数のエンハンサーが重要であることを明らかにした。興味深いことに、近位・遠位のエンハンサー活性制御には同一の転写調節因子が働くことより、この因子がSgk1遺伝子の血管内皮細胞発現調節の中心を担うことが示唆された。さらに、血管内皮細胞Sgk1発現によるリン酸化プロテオーム様式の解析も継続しており、新規の基質候補の機能的意義を検討している。コロナ感染対策のため動物実験施設の運営および動物実験に一定の制限を行ったことより、研究の進展はやや遅延したが、実験結果は順調に得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度までに行った研究に引き続き、Hey1およびファミリー因子Hey2の細胞特異的欠損によって生ずる下流のシグナル伝達異常について解析を進めるとともに、Heyファミリーの血管内皮細胞や心筋細胞における遺伝子発現様式を規定するエンハンサーによる転写調節機構を検討してゆく。また、そのエンハンサー活性を利用した新しい実験システムを構築するため、新しい遺伝子組換えマウス系統の樹立も行う計画である。Tmem100研究に関して、血管内皮エンハンサー解析に関する論文報告を急ぐとともに、小型膜タンパク質であるTmem100が複合体を形成する機能因子の探索と、それらパートナー因子との複合体形成を介したTmem100の分子機能メカニズムを明らかにしたい。内皮細胞の分化・増殖・伸長・移動・分枝・高次構造形成などのうち、Tmem100が働く生命現象の特定も進める計画である。一方、Sgk1エンハンサーについて上流因子による活性制御について培養細胞系などを用いて明らかにするとともに、血管内皮細胞における新規Sgk1基質候補については、Sgk1による活性制御の分子機能としての重要性、さらにSgk1と新規基質の相互作用による血管内皮細胞機能制御機構について検討してゆく。
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Research Products
(12 results)