2019 Fiscal Year Annual Research Report
抗フラビウイルス薬の創製を目指した中和モノクローナル抗体認識の立体構造基盤
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18H02855
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
加藤 龍一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (50240833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 龍彦 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10432105)
正木 秀幸 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (90247982)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フラビウイルス / ウエストナイルウイルス / 中和モノクローナル抗体 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
時に致死性の脳炎・髄膜炎を惹き起こすフラビウイルス科の蚊媒介性ヒト感染性ウイルスであるウエストナイルウイルス(WNV)は、世界の広い地域に分布している。我が国への感染拡大の危険性も指摘されているが、実用的な治療薬やワクチンはない。我々は抗 WNV E タンパク質モノクローナル抗体の抗原認識機構を明らかにし、その知見に基づき抗 WNV 薬の創薬を目指すための基盤研究を行っている。具体的には、新たに単離されたエピトープの異なる3種類のモノクローナル抗体と、WNV E タンパク質の複合体のX線結晶構造解析を進めている。 昨年度に引き続き、WNV E タンパク質およびそのモノクローナル抗体それぞれについて、発現と精製を行った。WNV E タンパク質は、全長を昆虫培養細胞で発現させ(近畿大学)、その培養上清(発現タンパク質を含む)から目的タンパク質を精製した(高エネ機構)。また、WNV E タンパク質の全長およびドメインごとの大腸菌発現コンストラクトを作成し、その発現と精製を行った(高エネ機構)。抗体については、安定発現細胞株を樹立しその発現と精製を行った(富山大学)。得られた精製タンパク質を用いて、複合体の形成とその精製、複合体の結晶化を行った(高エネ機構)。その結果、ドメイン1-2と抗体の複合体については、低分解能回折(3.6Å)を与える微結晶を、ドメイン3と抗体の複合体については、3.7Å分解能を与える結晶を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WNV E タンパク質全長について、近畿大学において昆虫培養細胞を用いて発現させ、発現タンパク質を含む培養上清を高エネ機構で精製した。また、大腸菌での発現を行うと共に、近畿大学の技術を移転して高エネ機構でも昆虫培養細胞を用いた発現系を構築した。コンストラクトについては、全長、ドメイン1-2、ドメイン3、の合計3種類についてタグの有無など複数のものを作成し、その発現と精製の検討を進めた。実験計画法なども用いてスモールスケールで良い結果が得られたものについて、ラージスケールでの発現精製条件の検討を行った。モノクローナル抗体については、富山大学において安定発現細胞株の樹立、発現、粗精製を行い、高エネ機構で複合体の作成と最終精製を行い結晶化実験などに供するようした。 全長WNV E タンパク質と1種類の抗体の組合せについて、結晶化スクリーニングを実施したところ、タンパク質結晶を得ることができたが、残念ながらその後どうやっても結晶を再現することができず、この実験は一旦中止している。平行して、同じサンプルを用いてクライオ電子顕微鏡による観察を行ったが、溶液中では単分散であるサンプルが、電顕グリッド上では凝集しているという問題点が明らかになった。ドメイン1-2と抗体の複合体については、低分解能回折(3.6Å)を与える微結晶を得ることができた。ドメイン3と抗体の複合体についても、3.7Å分解能を与える結晶を得ている。これらについては、より高分解能な高品質結晶を得ることを目指し、結晶化条件の最適化を進めている。また、他の抗体との組合せについても結晶化スクリーニングを実施すべく準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている低分解能結晶について、より高分解能な高品質結晶を得るために結晶化条件の最適化を行う。また、抗体の組み合わせを変えての複合体結晶の結晶化スクリーニングを実施し、結晶が得られればX線回折実験、構造解析を行う。抗原抗体の相互作用の議論ができる分解能の立体構造を得ることを目指し、その構造および構造比較を行って、それら中和抗体がどのようにしてウイルス増殖の中和活性を示すかの分子機構を明らかにする。さらに、変異体導入実験、ウイルス増殖阻害実験などについても実施すべく検討を行う。
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Research Products
(6 results)