2019 Fiscal Year Annual Research Report
節足動物媒介ウイルスの特異な感染現象を反映したゲノム改変型宿主細胞の開発
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18H02856
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
伊澤 晴彦 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (90370965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20435712)
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (10215923)
深澤 征義 国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (20291130)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 節足動物媒介性ウイルス / 宿主細胞 / ゲノム科学 / ゲノム編集 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス媒介節足動物由来の新規培養細胞の樹立を目的として,ネッタイシマカ,ヒトスジシマカ,フタトゲチマダニの胚子を用いた初代培養を試みた.その結果,ネッタイシマカおよびヒトスジシマカの初代培養において,継代培養と凍結保存が可能な細胞系の樹立に成功した.このうち,ネッタイシマカ由来培養細胞は,各種蚊媒介性フラビウイルス(デングウイルス,黄熱ウイルス,ジカウイルス)に対して,それぞれに異なる感受性を示すことが明らかとなった.一方,フタトゲチマダニの初代培養では,持続的な増殖を示す細胞集団は得られなかった. 前年度までにコガタアカイエカのNIID-CTR細胞のゲノム配列を解析したが,2019年度は国内のコガタアカイエカ個体の集団遺伝学的解析を行い,実際にNIID-CTR細胞が国内の集団の遺伝子型をよく代表していることを確認した.一方で,国外および琉球地方のコガタアカイエカに関しては遺伝学的に大きな差があることが示された. 前年度までに,ウイルス分離・検出に汎用されるVero細胞に比べ,ヒト由来Huh7.5.1-8細胞の方が各種昆虫媒介ウイルスに対する細胞変性効果が高いことを示してきたが,ダニ媒介性ウイルスについても,同様の傾向が見られることがわかった.また,ヒト由来HeLa細胞系よりウイルス感受性・許容性の異なる株が分離できており,これら細胞株の網羅的遺伝子発現比較解析から,既知のウイルス感受性遺伝子に加え,様々な遺伝子発現変化の情報が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である新規蚊由来培養細胞を2株樹立することに成功した.これら新規細胞系は,各種蚊媒介性ウイルスの増殖性が異なることを示唆する結果を得ており,ウイルスの感受性に関わる因子の同定とゲノム改変に向けた有用な材料が整った. 国内のコガタアカイエカ個体について多型解析を行い,NIID-CTR細胞のもつ遺伝子多型(SNPs)は国内の個体集団に含まれる組成になっていることを確認した.これにより,NIID-CTR細胞は国内のコガタアカイエカのモデル細胞と扱う根拠が得られた. ヒト由来Huh7.5.1-8細胞は,昆虫媒介性ウイルスに加えダニ媒介性ウイルスの産生・分離や,検出にも非常に有用であることが示された.また,節足動物媒介性ウイルスに対して,ウイルス感受性・許容性に関わる可能性のある宿主遺伝子に関する基礎情報も得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
NIID-CTR細胞に関して,抗ウイルス遺伝子ノックアウトによる高ウイルス感受性細胞の作出を試みる.また,NIID-CTR細胞や新規ヒトスジシマカ由来細胞を用い,C6/36細胞では分離ができなかったウイルスの分離を試みる.さらに,新規ネッタイシマカ由来細胞に関して,デング・黄熱・ジカウイルスの感受性・増殖性を調べ,有用性を検証する.一方,マダニ由来細胞のVirome解析の結果,複数の潜在感染ウイルスの存在が認められたため,抗ウイルス剤処理による除去を試みる. NIID-CTR細胞で発現していない遺伝子に関してエビデンスに基づいた正確な遺伝子アノーテーションを行うため,コガタアカイエカ飼育個体の各発生段階についてRNAseq解析を行う.また,これらのデータを培養細胞の遺伝子発現パターンと比較し,細胞不死化のメカニズムを明らかにする.NIID-CTR細胞ゲノムアセンブリについて染色体レベルのゲノムマップを得る目的で,Hi-C法によるスキャホールディングを行う.さらに,NIID-CTR細胞の遺伝子発現データから高発現プロモーターの候補をリストアップする. ヒト由来HeLa細胞系,サル由来Vero細胞系より,ウイルス持続感染細胞系の樹立を試みる.可能であれば,ウイルス感染耐性細胞株の分離も試みる.非感染・感染耐性・一過性感染・持続感染細胞間での遺伝子発現パターンを比較し,各感染形態に特徴的な遺伝子発現変化の情報を得る.これら情報に基づき,各感染形態の維持に重要な遺伝子の絞り込みも可能な限り行う.また,前年度までの研究でウイルス許容性に関与する可能性が考えられた遺伝子群との比較検討も行う.また,C型肝炎ウイルス許容性の非常に高いHuh7.5.1-8細胞について,各種節足動物媒介性ウイルスに対する感受性・増殖性についても可能な限り検討する.
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[Presentation] Virome analysis of Japanese encephalitis vector, Culex tritaeniorhynchus, collected from three prefectures in Japan2019
Author(s)
Astri Nur Faizah, Daisuke Kobayashi, Michael Amoa-Bosompem, Haruhiko Isawa, Kyeong Soon Kim, Mamoru Watanabe, Kozue Miura, Kazuhiro Hirayama, Kyoko Sawabe
Organizer
第71回日本衛生動物学会大会
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[Presentation] 蚊ゲノムに内在化したウイルス様配列の遺伝子構造解析2019
Author(s)
鳥井駿, 鍬田龍星, Spriyono, 下田宙,Thanmaporn Phichitraslip,Sathaporn Jittapalapong, Worawut Rerkamnuaychoke,Upik Kesumawati Hadi,Agus Setiyono,Srihadi Agungpriyono,糸川健太郎,伊澤晴彦,沢辺京子,前田健
Organizer
第71回日本衛生動物学会大会
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[Presentation] COMPARING THE COMPETENCE OF GHANAIAN AND VIETNAMESE AEDES MOSQUITOES AS VECTORS OF THE DENGUE VIRUS2019
Author(s)
Michael Amoa-Bosompem, Daisuke Kobayashi, Katsunori Murota, Astri Nur Faizah, Kentaro Itokawa, Mitsuko Ohashi, Samuel Dadzie, Kofi J. Bonney, Toshinori Sasaki, Haruhiko Isawa, Kyoko Sawabe, Shiroh Iwanaga
Organizer
ASTMH 68th Annual Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] DISEASE SURVEILLANCE AND VIROME ANALYSIS STUDY OF JAPANESE ENCEPHALITIS VECTOR, CULEX TRITAENIORHYNCHUS, COLLECTED FROM THREE PREFECTURES IN JAPAN2019
Author(s)
Astri Nur Faizah, Daisuke Kobayashi, Michael Amoa-Bosompem, Haruhiko Isawa, Kyeong Soon Kim, Mamoru Watanabe, Kozue Miura, Kazuhiro Hirayama, Kyoko Sawabe
Organizer
ASTMH 68th Annual Meeting
Int'l Joint Research