2019 Fiscal Year Annual Research Report
抗IL-6受容体抗体による術後癒着抑制の分子機構検証と臨床試験への展開
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18H02885
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (90199373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 悦朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80359801)
宇山 直樹 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70402873)
筒井 ひろ子 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (40236914)
石戸 聡 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10273781)
小嶋 聡一 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, ユニットリーダー (10202061) [Withdrawn]
Qin XianYang 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (60756815)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 術後癒着 / マイクロアレイ / IL-6 / 好中球 / 抗IL-6受容体抗体 / 腹膜中皮細胞 / TNF |
Outline of Annual Research Achievements |
術後癒着のIFN-γ, PAI-1のシグナル以降の線維形成分子機構はこれまで未解決であった。本年度、線維形成細胞・コラーゲン産生に至る分子機構をほぼ解明し、内容を論文に発表した(Sci. Reports. (2019. 9:17558)。遺伝子マイクロアレイ検索・パスウェイ検索よりより癒着形成に重要な因子の候補としてIL-6, TNF,細胞遊走関連因子、であることが判明した。またトランスジェニックマウス検証より、線維形成細胞は腹膜全体を覆う腹膜中皮細胞であることを発見した。概要は、①外科侵襲による臓器末梢毛細神経の損傷、腹膜中皮細胞の障害、②神経軸索よりタキキニンの分泌・NKT細胞刺激によるIFN-γ分泌、それに伴うPAI-1の産生亢進、フィブリン溶解阻害、③外科侵襲を受けた中皮細胞よりのIL-6, CXCL2産生、それに伴う好中球の手術局部への好中球遊走、④IL-6による好中球からのTNF産生、autocline 機構による好中球よりのTGF-β産生、中皮細胞の線維化・コラーゲン産生、である。またこれに伴い、IL-6のシグナル抑制が有効であることを示し、現在抗IL-6受容体抗体による術後防止に関して特許申請中(国内・国際)である。 中皮細胞の線維化に関してはトランスジェニックマウスによる証明を試みた。腹膜中皮細胞は細胞核にはWT-1遺伝子、細胞質にはpodoplaninn遺伝子を特異的に発現している。WT-1Tgマウスを用い、中皮細胞の術後癒着に至る過程のトレーシングを行い、中皮細胞自身がα-SMA産生細胞、すなわち線維形成細胞になることを証明した。またin vitroでヒト好中球を培養、実際にリコンビナントIL-6を作用させ、好中球がTNF, TGF-ベータ産生細胞であることも実証した。さらに抗IL-6受容体抗体が術後における創傷治癒遅延をもたらさないこともマウス皮膚切除モデルにて検証した。これらの事実より癒着形成分子機構の解明およびその予防法の一つを提案、特許申請を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた術後癒着の分子機構解明(フィブリン形成と外科侵襲による中皮細胞の障害、それに続くIL-6, CXCL2産生による好中球の集積、好中球によるTNFおよびTGF-β発現、それによる中皮細胞自身の線維化)がほぼ解明された。また防止方法についても研究が進みIL-6に関しては抗IL-6受容体抗体に続いてさらに下流のシグナル制御に関して特許申請予定である。また研究内容もNature Groupの科学誌、Sci.Reportsに掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
解明した癒着形成の分子機構に基づき、IL-6よりさらに下流のTNFシグナルの抑制による癒着防止法の研究を推進、特許申請を図る。またフィブリン形成に関する分子機構に着目、血液凝固系における標的薬剤を探索予定である。また、さらに昨今、癌に対する新たな戦略として粒子線治療が登場、陽子線(プロトンイオン)・重粒子線(カーボンイオン)が実用化されている。しかしその問題点として照射による強度の癒着形成がその後の外科手術を困難にしている現実がある。その癒着形成分子機構を検証、予防法の探索を試みる。
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