2018 Fiscal Year Annual Research Report
Physiological analysis of spinal cord-brain coupling in neuropathic pain and elucidation of glial cell activation mechanism.
Project/Area Number |
18H02897
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
紙谷 義孝 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90381491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 美佳 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20774061)
倉部 美起 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30635579)
渡部 達範 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30748330)
大西 毅 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (60804573)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 脊髄―脳連関 / フラビンタンパク蛍光イメージング / 脊髄細胞外記録 / グリア活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はフラビンタンパク蛍光イメージング法を用いて、足底刺激に対する神経障害性モデルマウスの脊髄及び大脳皮質での興奮性の経時的変化を検討した。マウスは生後6~8週の雄性C57BL/6Nを用い、坐骨神経の分枝のうち腓腹神経以外を結紮するspared nerve injury (SNI)モデルを作成し、von Frey hairによる逃避閾値測定、障害側足底への触刺激に対する脊髄後角及び大脳一次知覚野でのフラビンタンパク蛍光反応の測定は術後4、7、14、21日後に行った。測定刺激に対する逃避閾値の低下は神経障害4日後から認められるが、障害側の足底への触刺激に対する同側の脊髄後角でのフラビンタンパク蛍光反応は徐々に減少するのに対し、反対側の大脳一次知覚野での応答は神経障害後4日目から徐々に増強し、障害14日目にはシャムマウスと比較して有意に増強した。一方、ラットの坐骨神経絞扼(CCI)モデルを用いた脊髄後角での細胞外記録を行った実験では、神経障害10日目以降では障害同側の脊髄後角における自発性神経活動は減少するものの、足底刺激に対する神経活動応答は増強し、自発性神経活動の減弱と痛み刺激に対する神経活動応答の増強は神経障害28日後まで経時的に大きくなる傾向が認められた。 脊髄後角及び大脳一次知覚野におけるインビボカルシウムイメージングを行う目的で、アデノ随伴ベクターにカルシウム感受性タンパクを搭載したウイルスベクター(pAAV-GCaMP6s)を脊髄に注入する予備実験を行った。九州大学の津田らの報告を参考とし、ケタミンによる全身麻酔下に生後6~8週のC57BL/6Nの下位胸椎(T11/12)の椎間からエバンスブルーにより着色したPBSを500μL注入し、腰膨大部に薬液が注入できることを確認し、技術的に脊髄に対してカルシウム感受性タンパク質を遺伝子導入できる目処が立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経障害性疼痛モデルマウスを用いた脊髄及び大脳一次知覚野におけるフラビンタンパク蛍光イメージングについては予定通り進捗したが、脊髄及び大脳一次知覚野へのカルシウム感受性タンパク質の導入及び痛み刺激に対するインビボカルシウムイメージングについては、ウイルスベクター購入の手続きに時間がかかったことで研究開始までの時間が予想以上に長くなったことに加え、実験を担当する大西が他の研究の追加実験を要求され、そちらに時間が取られたことで3ヶ月程度研究が停滞した。また、免疫組織学実験及び生化学実験(PCRを含む)を担当する佐々木が平成30年8月から平成31年3月まで産休・育休を取ったため、その分研究が停滞した。しかし、佐々木は産休に入るまでの間にアストログリア活性化の指標の一つと考えられているSTAT3の脊髄における免疫染色の条件検討をほぼ終了させ、今後はモデルを用いた免疫染色を再開させる予定である。 神経障害性疼痛モデルの脊髄において、触刺激に対するフラビンタンパク蛍光応答や自発的神経発火の頻度が低下するにもかかわらず、痛み刺激に対する神経応答が増強するメカニズムを検討する目的で、神経障害モデル動物の脊髄における神経細胞、特に抑制性介在ニューロンが減少しているのではないかとの仮説を立て、抑制性介在ニューロンのマーカーとしてPax2、すべての神経細胞のメーカーとしてNeuNに対して免疫染色を行ったところ、SNIモデルマウスとCCIモデルラットで障害側脊髄後角におけるPax2陽性抑制性介在ニューロンばかりでなく、NeuN陽性神経細胞自体も有意に減少していることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は末梢神経障害によってなぜ脊髄後角で神経細胞が脱落するのか、それにグリア細胞(ミクログリア、アストログリア)の活性化が関与しているのかなどを生理学的実験(フラビンタンパク蛍光イメージング、インビボカルシウムイメージング、インビボ細胞外記録法)と同時に免疫組織学的手法を用いて明らかにしていく予定である。一次知覚神経の障害により何故脊髄後角の二次ニューロンが脱落するのかを、脊髄後角におけるグリア細胞の活性化の観点から検討していく。また、神経障害性疼痛モデルならびに炎症性疼痛モデルにおける脊髄後角および大脳一次知覚野のグリア細胞のグルタミン酸トランスポーター活性についても組織学的ならびに生化学的な検討に着手する予定である。
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