2019 Fiscal Year Annual Research Report
進行性骨化性線維異形成症の治療法開発に向けた病態解析
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18H02928
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 永輝 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (90620344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸口田 淳也 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (40273502)
吉富 啓之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (50402920)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 進行性骨化性繊維異形成症 / FOP / 異所性骨化 / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、進行性骨化性線維異形成症(以下、FOP)患者由来iPS細胞とFOPモデルマウスを駆使して、FOPにおける未解決の課題に取組み、異所性骨化(以下、HO)形成過程の全貌を解明し、FOPの病態の理解を深める。同時に現在開発中のシロリムスを用いた治療法をより有効なものとするための知見を得ることを目的とする。2019年度に実施した研究成果については下記の通りである。 1.異所性骨化を誘導するmTORシグナルについて:前年度の研究実施により、mTORシグナルの下流因子の中で、mRNAの翻訳に関わる因子がFOP細胞の軟骨分化に重要であることが示された。今年度はこの翻訳調節因子に対する薬剤誘導型shRNAを持つFOP-iPS細胞を樹立し、HOへの関与を検討した。iPS細胞から分化誘導した間葉系幹細胞をマウスの筋肉に移植し、ドキシサイクリン投与によりshRNAの発現をin vivoで誘導することで、HOが顕著に抑制された。更に免疫沈降法およびRNAシーケンシング解析により、この翻訳調節因子に結合が増加したmRNAの同定に成功した。 2.Dualシグナルの意義について:mTORの活性を誘発する因子の発現を高いレベルで維持するために、TGF-βシグナルとBMPシグナルの両方が必要であることが示された。更に、アクチビンAによるTGF-βシグナルが上記の翻訳調節因子の発現を促進させることで、翻訳促進に関わることが示された。 3.シロリムスの異所性骨化再発予防効果:FOP-ACVR1トランスジェニックマウスの筋肉に損傷を加え、形成されたHOを切除し、シロリムスの再発予防効果を検討した。シロリムスの投与により、HOの再発が顕著に抑えられており、外科的切除による機能改善という治療が可能である結果が得られた。更に、全身に自然発生するHOも抑制されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の通り、mTORの下流因子である翻訳調節因子がFOP細胞の軟骨分化およびHO形成に重要であることを明らかにし、更にこの翻訳調節因子により制御される遺伝子を同定することに成功した。FOP細胞において、アクチビンAが誘導するDualシグナルによりmTORシグナルの活性化および翻訳制御における役割が解明されつつある。シロリムスのHO再発予防およびHOの自然発生における効果も検討されており、成果を投稿中である。 以上のように、研究の全体が予定通り進行しており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、前年度に引き続き、以下のように実施する。 1.HOを誘導する mTORシグナルについて:翻訳調節因子に結合が増加したmRNA(遺伝子)のタンパク質発現を確認すると共に、FOP細胞の軟骨分化における役割を検討する。 2.Dualシグナルの意義について:Dualシグナルによる翻訳調節因子および標的遺伝子における転写制御および翻訳制御を調べる。 3.シロリムスのHO再発予防効果:引き続きHO組織像の時間依存的変化を解析し、シロリムスの治療効果に対する知見を深める。
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