2020 Fiscal Year Annual Research Report
検診と感染の両方を考慮するがん予防の実装可能な実証的効果検証モデルの構築
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18H03026
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梯 正之 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (80177344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
恒松 美輪子 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (80704874)
川崎 裕美 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (90280180)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん検診 / 数理モデル / シミュレーション / 感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん検診の有効性について、特に感染の関係するがんである子宮頸がんなどに焦点を当てて、わが国のがん罹患率の状況をきちんと反映した形での根拠のあるがん検診システムを検討するすることを目的として、理論疫学的手法を用いて研究を行っている。現実社会の特徴を適切に反映したモデルを構築し、モデルのパラメターの推定を行うことで妥当性の高い結論を得ることを目指している。 標記の研究目的を達成するため、乳がん検診の分析に取り組んだ経験を生かし、初年度(2018年度)は、シミュレーション環境の整備とともに子宮頸がん検診の数理モデルの作成、分析、ならびに検診の有効性評価に取り組んだ。次年度(2019年度)はそれに引き続き、特に、がんの診断・未診断の別やステージ別の状態間の遷移率の推定に関しての検討を行った。さらに、他のがんの分析にも拡張するため、データの収集を行った。そして、当該年度(2020年度)は、これまでの成果の上に立って、モンテカルロ法によるシミュレーションを継続して実施し、検診の受診率、予防接種による効果が一部のHPVにしか効果がないことの制約などの評価を行った。これにより、特にHPVのうちワクチンが効くタイプのものが競争的に優位であった場合には、ワクチンによりそれが排除されるため、ワクチンが効かないタイプが増加する可能性があることがわかった。これらをきちんと分析するため、効率的でより信頼性の高い推定・予測が可能なモデルの開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度(2020年度)までに、子宮頸がん検診の数理モデルの作成・分析、特に、がんの診断・未診断の別やステージ別の状態間の遷移率の推定の検討を行った。特に、遷移率の推定に当たっては、感染症の数理モデルの中でもHIV感染者の推定において、感染者の状態(この場合はCD4+セルの数)別のモデルを作成し遷移率(診断率)の推定を行う手法が使われていることを参考にした。また、感染のシミュレーションにあたっては、日本の人口構成(年齢分布)や、HPVの感染に関わる男女間のカップル形成についての設定についても検討し、シミュレーションを実施した。シミュレーションにおいては、モンテカルロ法によるシミュレーションを実施しているため時間を要しているが、検診の受診率、予防接種による効果が一部のHPVにしか効果がないことの制約などの評価を行った。これらのアプローチを通して、効率的で信頼性の高い推定・予測が可能なモデルの開発が開発されている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、検診と感染のシミュレーションモデルの研究を進める。これまでに実施した、子宮頸がん検診の数理モデルの作成とシミュレーションの結果に基づいて、検診実施下での予防接種の効果(予防接種をしないことによる失われた効果の推計を含む)についてより精度の高い評価を目指す。特に、人間集団の状況(特に、感染に関わる性行動や、検診受診に関わる意見分布などを現実に近いように設定する方法と、これらの条件への感受性について詳細に検討したい。
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Research Products
(2 results)