2018 Fiscal Year Annual Research Report
Teaching medical students and junior doctors social determinants of health (SDH) in response to society's needs
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18H03030
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
武田 裕子 順天堂大学, 医学部, 教授 (70302411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 浩樹 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40252366)
孫 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40637039)
小曽根 早知子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80645549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 健康の社会的決定要因 / SDH / 医学教育 / 健康格差 / 卒前卒後教育 / 社会的排除 / 「やさしい日本語」 / アクション・リサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題に取り組むにあたり、倫理審査委員会に審査申請し承認された(承認番号:順大医倫第2 018119号)。本研究は、開発した教育プログラムを実践しながら再構築し、普及を図るアクション・リサーチである。“自己責任”と患者を責めるのではなく、健康格差の社会的要因であるSDH(Social determinants of health)を認識し、患者の生活背景を踏まえて医療を提供する医師育成を目指す。4年プロジェクトの初年度は以下を行った。 (1)SDH教育実施状況調査:全国の医学部・医科大学を対象に実施した。82校に協力を依頼し、51大学から回答を得た(62.2%)。11大学(21.6%)が、医学教育モデル・コア・カリキュラムに“「健康の社会的決定要因(SDH)」を概説できる”が記載されたことを知らなかった。また、SDH教育の実施は23大学(45.1%)にとどまり、本研究のニーズが確かめられた。 (2)SDH教育実践事例の収集と情報発信:国際医学教育学会(AMEE)においてSDH教育ワークショップを担当し、参加者間で情報共有を図ると同時に我々の教材を紹介した。さらに、カナダのトロント大学・マギル大学を視察した。SDHを認識するだけでなく、健康格差を「社会的公正」の観点でとらえてSDHへの取り組みを行っていた。その内容を教材に含めた。 (3)SDH教育の教材作成や評価法開発:分担研究者間で、各自の実践例や教材を共有した。評価法については、候補となる学習者評価ツールを検討した。変容的学修の観点から学生のレポートを解析する質的研究については、翌年に繰り越しとなった。 (4)SDH探索アプリの開発:専門家に相談し、ウェブサイトを用いた検索システムを用いることとなった。日本Health Promoting Hospital (HPH)ネットワークの作成した社会制度利用対応表を埋め込むこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教材開発や教育に関する情報収集は当初の予想以上に進み、多くの実践事例を収集できた。しかしながら、それらをハンドブックに落とし込むまでには至らなかった。2019年度には、SDH教育の導入・普及を図るためのワークショップや論文の執筆が予定されており、その機会に文章化する予定である。また、過去のSDH教育で評価に用いた学生達の実習レポートを変容的学習理論に基づいて質的に解析する研究は、研究者間の連携不足で進まなかった。こちらも2019年度に実施予定である。 一方、研究を進めるにつれ、SDH教育には、SDHの認識にとどまらずそれに対して何らかの行動を起こすアドボケイトとしての役割を学習者が担えることが重要であると明らかになった。その実践事例も教材に含める必要があり、本課題では在留外国人診療に役立つ「やさしい日本語」の修得プログラムを並行して開発することとなった。そのためのワークショップを、日本語専門家の指導のもと、地域の医師会や医療団体の協力を得て実施している。当初の計画にはなかったものであるが、社会的に排除され、健康格差に直面している方々を医学生・研修医が認識することにつながり、外国人就労拡大の開始に伴い社会のニーズにも応えるものとなると考えている。社会的問題に対して一医療者としてできることはないという無力感を抱きがちななか、診療現場で自分たちにできることとして「やさしい日本語」を活用し普及することがSDHの理解にどのように影響するかは、次の研究につながる課題と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題はアクション・リサーチであり、計画・実践・観察・振り返りを繰り返しながら、より充実した教材作成、効果的導入・活用支援、評価法の開発を継続する。2019年度は、①卒前・卒後教育の学修教材作成,②実践事例ならびに教材の紹介・導入支援(支援希望医学部・研修病院)、③学修者評価法の検討、④SDHアプリのプロトタイプ開発、⑤変容的学修に関する質的データ解析、を行う。 卒前教育については研究者間で各大学のリソースを共有し、汎用性の高いプログラムやパワーポイント教材などをまとめる。卒後教育の教材作成は、二つの臨床研修病院(耳原総合病院・千鳥橋病院)の初期研修医やMSW、看護師による多職種ワークショップで行う(2019年7月6日)。各病院から症例を持ち寄り、症例シナリオをもとに関連するSDHや利用可能な社会資源を学修するものである。 作成した教材の紹介・導入・活用支援の場として、第73回岐阜大学MEDC主催の医学教育セミナーにおいてワークショップを予定している(2019年8月10日・愛知学院大学)。さらに、日本医学教育学会の機関誌『医学教育』50巻5号(2019年10月末発行)において、SDH教育特集号を企画しており、本課題研究代表者・分担者・協力者が執筆予定である。これらの発信を効果的に行うため、研究ミーティングをもち、各プログラムの改訂や評価法の案の作成を行う。海外に向けては、米国総合診療医学会(SGIM)のInterest Groupに採択され、2019年5月10日にワークショップで本課題の取り組みを紹介する。 SDHアプリについては、ウェブサイトを用いる方が安定した運用となるため、開発担当者とあらためて検討を進める。コンテンツについては、上記の教材に加え、地域の社会資源の検索機能を埋め込み、掲載する社会資源探索を学生・研修医教育プログラムに含める可能性についても検討する。
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Research Products
(16 results)