2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the transmission system of influenza virus due to the viscosity of aerosol
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18H03040
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
中屋 隆明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80271633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 亮平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50795383)
白杉 迪洋 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (80807727)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 呼吸器感染ウイルス / インフルエンザウイルス / エアロゾル / 粘性 / 手指衛生 |
Outline of Annual Research Achievements |
エアロゾル(噴霧型)感染実験システムを用いて、ミスト化ウイルスの感染価の経時変化を測定することに成功した。 また、粘液中のウイルスに対する手指消毒の効果判定について、投稿論文を発表した(mSphere. 2019 Sep 18;4(5))。手指衛生の効果評価では、粘液中のインフルエンザウイルスに対するエタノールベース阻害剤(EBD)の有効性が生理食塩水中のウイルスと比較して低下することを報告した。生理食塩水中のウイルス は 30 秒以内に不活性化されたが、粘液中のウイルスは、120 秒間のエタノールを使用した手指衛生(AHR)にもかかわらず感染力を維持したままであり、現行のAHRでは感染性粘液を完全に不活化することは困難であった。一方で、感染性粘液が完全に乾燥し固形化するとハイドロゲルの特性は失われ、消毒効果の低下は生じないことも明らかにした。さらに、物理的に感染性粘液を洗い流す流水による手洗いによる手指衛生(AHW) は、30 秒以内にウイルスを不活性化した。 本研究により、感染性粘液が手指などの体表に付着して完全に乾くまでの間は(本研究では約 30-40 分 間と想定)、EBD を使用した適切なAHR 施行後でも感染力を維持した病原体が体表に残存し、周囲に感染が広がるリスクがあることが明らかとなった。 本論文について様々な議論があり、我々も代表的な質問に対する回答を後日発表した(Reply to Peters and Pittet, "Influenza and Alcohol-Based Handrub: The Danger of Ignoring Clinical Relevance," and Boyce, "Alcohol-Based Handrubs and Influenza A" mSphere. 2019 Nov 274 (6))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・エアロゾル(噴霧型)感染実験システムの確立 これまでに、エアロゾル発生装置とパーティクルカウンターを組み合わせることにより、バイオエアロゾルの粒径(粒度)分布および気中のウイルス感染価を測定するシステムを確立した。加えて、空気の対流管理、温度および湿度管理が可能な 「滞留・感染Box」を設置し、予備試験としてミスト化した鳥パラミクソウイルスを一定時間滞留させ、その後感受性細胞に暴露させることにより感染細胞数を測定した。その結果、25℃、湿度10%の条件下で感染価の半減時間が約10分であるなど、感染価の経時的推移を測定することに成功した。 ・粘液中のウイルスに対する手指消毒の効果判定 インフルエンザウイルス(A型)に感染した患者の上気道由来粘液を使用して、ウイルスの不活化試験とエタノール濃度測定を実施した。さらに臨床研究を行い、エタノールベース阻害剤(EBD) を使用した手指衛生(AHR) および 流水による手洗いによる手指衛生(AHW) の有効性を評価した。感染性粘液の物性解析では、粘液は生理食塩水に比して粘度は非常に高く、シュードプラスチック流体の特性を示すハイドロゲルでした。ハイドロゲルとしての粘液の物理的性質のために 拡散/対流の速度が遅くなることが原因で、「エタノール濃度がウイルス不活性化レベルに達する時間」および「EBDがウイルスを完全に不活性化するのに必要な時間」は、生理食塩水条件下より粘液条件下の方が約 8 倍程度長い結果となった(mSphere. 2019 Sep 18;4(5))。
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Strategy for Future Research Activity |
・エアロゾル(噴霧型)感染実験システムの確立 これまでに、空気の対流管理、温度および湿度管理が可能な装置を設置し、予備試験としてミスト化した鳥パラミクソウイルスを一定時間滞留させ、感染価の経時的推移を測定することに成功した。今年度は、エアロゾル化インフルエンザウイルスの空気中感染動態の解析を進める。 ・粘液中のウイルスに対する手指消毒の効果判定 2019年に発表した論文の研究をさらに発展させる。特に人口皮膚等を用いた手指消毒の評価モデルを構築し、手指衛生・接触感染予防に有用な知見の集積を目指す。
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