2018 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少社会におけるコンパクトシティの健康への影響に関する疫学研究
Project/Area Number |
18H03047
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
尾島 俊之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50275674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20387749)
相田 潤 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (80463777)
中川 雅貴 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第3室長 (80571736)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人口減少 / コンパクトシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
人口減少は、日本のみならず国際的にも多くの国が直面する重要な課題である。地域においては、地域組織の崩壊、商店や医療施設を始めとした生活関連施設の維持困難によるアクセシビリティ低下等の問題が生じ、活動性や健康への負の影響が懸念される。そこで、その対応策としてコンパクトシティが注目されている。主として経済、地域社会・都市計画、社会保障、財政の分野において議論されることが多い。コンパクトシティの推進により、歩行時間の増加、適切な栄養状態、社会活動への参加、就労機会などのメリットがある可能性がある。しかしながら、人口減少の健康影響や、コンパクトシティの健康への効果などに関する研究は数える程である。 この研究の目的は、(1) 地域の人口減少の健康への影響及びその機序、(2) 転居の健康への正及び負の影響、(3) 都市機能充実の健康への影響及び人口減少との交互作用をそれぞれ明らかにすることである。交互作用については、人口減少が健康への負の影響をもたらし、市町村全体の人口が減少していても、中心市街地の都市機能が充実することによって健康への負の影響が抑制されるかをみる。 研究デザインはコホート研究である。これまでのコホート研究は、生活習慣や遺伝子と健康の関連を見るものが多かった。近年は社会疫学の関心が高まり、所得や教育、ソーシャル・キャピタルなどの健康の社会的決定要因に関するコホート研究も増えている。人口減少や都市機能は健康の社会的決定要因としての重要な要素であると考えられる。研究の全体計画として、人口減少、転居、都市機能等を曝露及び交互作用として、健康状態やそれに影響を与える中間的な因子をアウトカムとした分析を行う。この研究は、人口減少や、コンパクトシティについて、健康の面から本格的に検討する日本で初めての大規模実証研究である点に学術独自性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、(1) 文献等の情報収集、(2) 既存データの整理、(3) 追跡と予備的分析、(4) 新規調査項目の検討等の4本柱を進めた。文献等の情報収集としては、人口減少、コンパクトシティなどに関する国内外の文献収集、またそれらに対する各市町村での取り組み状況の情報収集を行った。既存データの整理としては、本研究の対象地域について、国勢調査による人口データの整理を進めている。さらに、これらの地域における店舗、公民館・集会所、医療機関、鉄道駅等についての情報を把握し、データベース化を進めた。追跡と予備的な分析としては、我々は、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study, JAGES)の一貫として、2010年度に全国28市町村の要介護認定を受けていない在宅の65歳以上の高齢者16万9千人を対象に自記式郵送調査を行い、11万2千人の回答(回収率66.3%)を得た。その後、2013年、2016年に、自記式郵送調査を行った。2018年度は、申請者らが蓄積したこれらのデータについて、本研究の視点から整理を行い、予備的な分析を進めてきた。新規調査項目の検討等としては、2019年度に対象地域の高齢者の健康状態やそれに関連する因子の状況を把握するための大規模郵送調査を予定しており、それに向けて、調査すべき事項の検討、調査対象市町村との調整などを進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、地域在住高齢者への大規模郵送調査が主要な実施内容である。この調査は、高齢者の健康状態等のアウトカムの把握と、今後の追跡に向けてのベースライン状態の把握という大きく2つの意義をもつ。アウトカムの把握に関しては、これまでの調査に回答してコホート研究に参加している高齢者の現在の健康状態等の調査を行う。健康状態に関する調査項目としては、治療中疾患の有無及び種類、主観的健康観、Geriatric Depression Scale (GDS)による抑うつ状態の程度、老研式活動能力指標による手段的日常生活動作(IADL)などである。また、健康状態と関連が強い要因として、痩せ(身長・体重)、過去1年間の転倒、外出頻度(閉じこもりか否か)、歩行時間、趣味の会・スポーツの会など種々の活動への参加状況などが含まれる。一方で、ベースラインの変数としては、最近の転居の有無(現在地の居住年数)、持ち家の状況、所得、家族構成、近所づきあいの程度、友人・知人と会う頻度、社会的支援の受領及び提供の状況、自動車の運転を始めとした利用している交通手段、公共交通機関・公共施設・商店の充実度等の地域の状況などが含まれる。なお、これらの変数はアウトカムや共変量等としても使用する。また、市町村の介護保険賦課情報の提供を受け要介護認定、死亡、転居等の追跡を継続的に行っていく。死亡については、死亡票の二次利用申請を行い、死因についても把握する。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 認知症の人・高齢者等にやさしい地域指標の地域間差に関する研究2019
Author(s)
尾島俊之, 堀井聡子, 横山由香里, 相田 潤, 花里真道, 宮國康弘, 平井 寛, 斉藤雅茂, 近藤尚己, ローゼンバーグ恵美, 近藤克則
Organizer
第89回日本衛生学会
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